夢の終焉 | ZAN

ZAN

鬱病、パニック障害、PTSD、etc…病気の見本市ながら能天気な性格故全く気付かれてない人が書くかなりヲタクに偏った日常の戯言⊂(^-^)⊃


物凄くプライベートな事だし、公開範囲を迷ったけど…一応、全体公開で。

ライブドアに移植したら、多分マイミク専用に振り分けます。




彼と出逢ったのはもう十年以上前。


当時の彼氏(王子の父親)の同郷の親友のバンドのメンバー、それくらいの認識だった。


当時の仲間に誘われ、なんとなくLiveを見に行った。



そこで、彼を初めて見て一瞬で心を奪われた。


同じベーシストとして嫉妬するくらいの音作りやパフォーマンス、何より技術が凄くて。


あぁ、こんな凄い人がまだ居たんだ、そう思った。



それからは友人と一緒に各地を回って追いかけた。


好きになった曲が悉く彼の作曲で、そのセンスや才能に本当に惚れ込んでた。



それから間もなくだった。


彼氏の浮気で傷心していた私を励ましてくれたのは彼だった。


バンドマンとして尊敬している彼が、私の傍で支えてくれて。


恋に落ちるのも早かった。



彼氏を追い出した2DKのマンションに彼が住むようになったのはそれからすぐの事。


お互い活動や仕事に追われ、一緒に過ごせる時間は寝ている間くらいだったけど、心底惚れ込んで更に尊敬に値する彼との同棲生活は、本当に幸せに満ち溢れてて、幸せ過ぎて怖いって言葉なんて存在しないと思ってた私が、身を持って体感した。


彼のファンに同性がバレてしまって、Liveには行けなくなってしまったけど、ステージ上の彼だけじゃなく、一人の人間として、恋人として傍に居られる幸せだけで充分だった。


同棲して数カ月、お互い将来を約束していたけど、元彼に監禁されずっと逢えない日々が続いて…そしてやっと解放され自宅に戻った時には、もう彼は部屋を去った後だった。


妊婦になった私も、もうこの地に残る意味を無くし、実家へと帰って子供を産んだ。



出産して間もなく、また彼と連絡が取れるようになった。


お互いの誤解や思いをちゃんと話して、ある夜、数カ月ぶりに再会した。


彼と過ごす時間は本当に楽しくて、あぁ、やっぱり大好きなんだな…なんて思った。


飲んで色々語ってから喫茶店へ。


話してる最中、プロポーズをされた。彼からの二度目のプロポーズ。


でも、凄く迷った。


子供を産んでしまった以上、結婚するなら彼をステージから引きずりおろす事になる。


ステージ上の彼は、本当に生き生き音楽を楽しんでいて、何より才能のある人。


自分の幸せの為に、彼の夢を奪いたくなかった。


私はもう現役には戻れない。だから、彼には夢に生きて欲しかった。


そして、私は自分の幸せより彼の夢を取って、プロポーズを断った。



それから逢う事は無くなったけど、これまで陰でずっと彼の活躍を見守ってた。


夢に生きてる彼は本当に素敵で。



何時か狭いハコを抜け出し武道館でLiveがあったらこっそり見に行こう。


それが私の楽しみだった。



その彼が、今年一杯でステージを降り、バンド生活に終止符を打つ事になった。


…私が託した夢も、武道館とか大きなステージを踏まず潰える事となった。


あの時、自分の幸せを取っていれば良かったのか、それとも彼が全うするのを見て満足するのか…。



まだ気持ちの整理がついてないから複雑だけど、最後のステージだけは見に行く事にした。


夢の終わりを見届けに。



最後の日まで、変わらずステージで輝いて欲しい。


そして、彼なりの最高の姿で終わってくれたら…それでいい。



あと2ヵ月。


全力で駆け抜けて、集大成見せてね。