李郢:立春一日江村偶興 | 古代文化研究所

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○立春詩の案内を続けている。今回案内するのは、李郢の『立春一日江村偶興』詩である。
  【原文】
      立春一日江村偶興
        李郢
    舊歷年光看卷盡
    立春何用更相催
    江邊野店寒無色
    竹外孤村坐見梅
    山雪乍晴嵐翠起
    漁家向晚笛聲哀
    南州近有秦中使
    聞道胡兵索戰來

  【書き下し文】
      立春一日、江村にて偶興す
        李郢
    舊歷年の光の、卷盡くを看、
    立春は何ぞ用ゐん、更に相催す。
    江邊の野店、寒く色無く、
    竹外の孤村、坐して梅を見る。
    山の雪は乍ち晴れ、嵐翠起こり、
    漁家は晚に向かひ、笛聲の哀し。
    南州に、近く、秦中使の有れば、
    胡兵に道を聞く、索戰來たる。

 【我が儘勝手な私訳】
      立春の日に、川沿いの村で、偶々感興を催し、作った詩一篇
        李郢
    昨日までの旧年暦年の光が、完全に終了したことを今日の立春の日に感じた、
    立春と言う日がどうして存在するのか、そういう感慨が続けて沸き起こった。
    川の岸辺の茶店は、まだ寒いばかりで、春の色は何処にも感じられず、
    竹山の先にある小さな村で、縁側に腰掛けて咲き始めた梅花を眺める。
    遠くに雪山が白く光って見え、今日は上天気で、春風に草が靡いて走り、
    岸辺の漁村は次第に暗さを増し、角笛が一層、風情を掻き立てている。
    此処、重慶市万州区には、近く秦中からの使が来ると言うけれども、
    使いは、西域の兵に道を聞くと言う、愚かな作戦を続けるほかないのだ。

〇中国の検索エンジン百度の百度百科が案内する李郢は、次の通り。
      李郢
   李郢,字楚望,长安(今陕西西安)人。大中十年,第进士,官终侍御史。诗作多写景状物,风格以
  老练沉郁为主。代表作有《南池》、《阳羡春歌》、《茶山贡焙歌》、《园居》、《中元夜》、《晚泊
  松江驿》、《七夕》、《江亭晚望》、《孔雀》、《画鼓》、《晓井》等,其中以《南池》流传最广。
    中文名: 李郢     国籍: 中国唐代      出生地: 陕西西安
    职业: 官员,诗人      代表作品: 南池、阳羡春歌
  http://baike.baidu.com/view/16579.htm

〇李郢の『立春一日江村偶興』詩は、なかなか難解な詩である。それは、おそらく、李郢が道士だからであろう。玄言詩の難解さが李郢の詩には存在する。現代語に翻訳するなら、李郢の詩は、思想詩であり、哲学詩である。

〇前に、李郢の「寒食野望」詩を案内している。これも相当難しい。
  ・書庫「無題」:ブログ『李郢:寒食野望』
  https://ameblo.jp/sisiza1949/entry-12519969983.html