白居易:杭州回舫 | 古代文化研究所

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古代文化には、多くの疑問や問題が存在する。そういうものを日向国から検証していきたい。

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○「百度百科」が載せる西湖の案内項目にある『赞美西湖的诗文』のうち、
  ・杨万里「晓出净慈寺送林子方」
   http://blogs.yahoo.co.jp/yan1123jp/37273098.html
  ・苏轼「饮湖上初晴后雨」
   http://blogs.yahoo.co.jp/yan1123jp/37279367.html
  ・白居易「西湖留別 」
   http://blogs.yahoo.co.jp/yan1123jp/37282653.html?type=folderlist
と案内してきた。

○今回、紹介するのは、『赞美西湖的诗文』が四番目に案内する『ぁ垤砂2鼇屐奸А敕癲枅魑鎔廖戮任△襦

    杭州回舫
      唐:白居易
    自別錢塘山水後
    不多飲酒懶吟詩
    欲將此意憑回棹
    報與西湖風月知

  【書き下し文】
    杭州回舫
      唐:白居易
    錢塘と別れしより、山水を後にす。
    酒を飲むこと多からずして、詩を吟ずることを懶る。
    將に此の意、棹を回すを憑みて、
    西湖と與に、風月を知ることを報ぜんことを欲す。

  【我が儘勝手な私訳】
    西湖を離れてから、自然と親しむことがない。
    酒を飲むことも少なくなったし、詩を詠むこともない。
    将に私の今の気持ちとしては、今すぐにでも西湖に帰って、
    私は西湖と融合して風流を解していたと、西湖を離れた今、報告せずにはいられない。

○前回、白居易の物語性について言及した。その点、「杭州回舫」は、七言四行詩で、まるで短い詩であるから、物語性がないかと言うと、決してそうではない。用意周到、ここでも、物語作者、白居易の物語性は、余すところなく存分に発揮されている。

○第一、題名となっている「杭州回舫」にしたところで、もう、物語が始まっている。「杭州回舫」とは、
  ・杭州に帰って、舟の舫(もやい:舟を繋ぎとめること)を繋ぎとめること
の意なのだろう。これだけでは、どういう話か、全く判らない。それを理解するためには、詩を読めと物語作者、白居易は促す。

○すると、起句・承句の、
  自別錢塘山水後
  不多飲酒懶吟詩
で、杭州西湖から都に帰って、まるで詩を作らず、自然に親しまず、酒宴すら楽しまない白居易の現状を理解させられる。

○転句・結句は、
  欲將此意憑回棹
  報與西湖風月知
となっていて、何故、表題が「杭州回舫」であるかを、読者は初めて理解する。白居易の詩情を喚起させていたのが西湖の山水であり、西湖の風月であったことを、白居易は都に帰って初めて理解したと言うのである。そのために、今、白居易に必要なのは、「杭州回舫」であり、「西湖回棹」なのだと言うことである。

○それほど、西湖山水や西湖風月は、白居易にとって大切な存在であった。それをじみじみ実感したのは、西湖を離れてからだったと言う。

○昨年10月、今年11月と、続けて杭州西湖を訪れた。確かに西湖は美しい。温暖で、穏やかな湖である。それは西安や洛陽、北京にはない風景である。人は水に親しみ、水とともに生活している。山には木々が生い茂り、花が咲き、鳥の声が聞こえる。

○そのことを、如実に表現するのが、

  上有天堂、下有苏杭(上に天堂有り、下に蘇杭有り)

の言葉なのであろう。その蘇州や杭州で、更に格別、美しいところが西湖である。まさに西湖は地上の楽園なのかも知れない。