四明狂客・賀知章の賀秘監祠 | 古代文化研究所

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古代文化には、多くの疑問や問題が存在する。そういうものを日向国から検証していきたい。

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○寧波から家に帰って、「ウィキペディアフリー百科事典」で『月湖』の項目を引いたら、
  ・賀秘監祠:賀知章の旧宅。博物館として一般に開放。
と言う記事が目に付いた。

○賀知章について、中国の検索エンジン『百度』は、次のように載せる。

      贺知章
   贺知章(659—744),字季真,号四明狂客,汉族,唐越州会稽永兴(今浙江萧山)人,贺知章诗文以绝
  句见长,除祭神乐章、应制诗外,其写景、抒怀之作风格独特,清新潇洒,著名的《咏柳》《回乡偶
  书》两首脍炙人口,千古传诵,今尚存录入《全唐诗》共19首。
  【人物简介】
   贺知章(公元659年-744年),字季真,越州永兴(今浙江省萧山)人,少时就以诗文知名。唐武后
  (武则天)证圣元年(695)中进士,授国子四门博士,迁太常博士。后历任礼部侍郎、秘书监、太子
  宾客等职。为 人旷达不羁,有“清谈风流”之誉,晚年尤纵,自号“四明狂客”、“秘书外监”。八
  十六岁告老还乡,旋逝。属盛唐前期诗人,又是著名书法家。作品大多散佚,现仅存二十首。

○以下、長々と、『人物生平』『史书传记』『后人评价』『个人作品』『人物轶事』『书法成就』『纪念建筑』『绍兴贺知章秘监祠』『贺知章墓』『野史逸闻』等を案内しているが略するしかない。やはり、中国で、賀知章が有名詩人であることが判る。

○賀知章は、日本でも結構、知られた詩人である。特に杜甫の『飲中八仙歌』の冒頭を飾る人物として著名。賀知章が相応の酒飲みであったことは言うまでもない。

      飲中八仙歌   杜甫
  知章騎馬似乘船   知章が馬に騎るは船に乗るに似たり
  眼花落井水底眠   眼花み 井に落て水底に眠る
  汝陽三斗始朝天   汝陽は三斗にして始めて天に朝し
  道逢麴車口流涎   道に麴車に逢へば口に涎を流す
  恨不移封向酒泉   恨むらくは封を移して酒泉に向はざるを
  左相日興費萬錢   左相の日興 万銭を費やす
  飮如長鯨吸百川   飲むこと長鯨の百川を吸ふが如し
  銜杯樂聖稱避賢   杯を銜み聖を楽しみ賢を避くと称す
  宗之瀟灑美少年   宗之は瀟灑たる美少年
  擧觴白眼望青天   觴を挙げ 白眼もて青天を望む
  皎如玉樹臨風前   皎として玉樹の風前に臨むが如し
  蘇晉長齋繡佛前   蘇晋は長斉す 繍仏の前
  醉中往往愛逃禪   酔中 往往にして逃禅を愛す
  李白一斗詩百篇   李白は一斗 詩百篇
  長安市上酒家眠   長安市上 酒家に眠る
  天子呼來不上船   天子呼び来れども船に上らず
  自稱臣是酒中仙   自ら称す 臣は是れ酒中の仙と
  張旭三杯草聖傳   張旭は三杯 草聖伝ふ
  脱帽露頂王公前   帽を脱し頂を露はす 王公の前
  揮毫落紙如雲煙   毫を揮ひ紙に落せば雲煙の如し
  焦遂五斗方卓然   焦遂は五斗 方に卓然
  高談雄辨驚四筵   高談雄弁 四筵を驚ろかす

○「ウィキペディアフリー百科事典」も、賀知章の代表作として、『回郷偶書』・『詠柳』・『題袁氏別業』を紹介している。個人的には、断然、『回鄕偶書』が好きである。

      回鄕偶書
    少小離家老大回   少小家を離れ老大にして回る
    郷音無改鬢毛衰   鄕音改まること無く鬢毛衰ふ
    兒童相見不相識   兒童相ひ見て相ひ識らず
    笑問客從何處來   笑ひて問ふ客何處從り來ると

○日本の鹿児島県屋久島安房生まれの儒学者泊如竹先生に『仲秋』詩がある。多分に、如竹先生の『仲秋』詩は、賀知章の『回郷偶書』詩の影響を受けていると思われてならない。

      仲秋
    獨仰清光三五秋   獨り清光を仰ぐ、三五の秋。
    天涯萬里憶同遊   天涯萬里、同遊を憶ふ。
    呼童相對語京洛   童を呼びて、相對し、京洛を語る。
    昔日心知共上樓   昔日の心知、共に樓に上る。
    【私訳】
      十五夜
    たった一人で、勿体ないような月光を浴びている八月十五日の夜である。
    遥か遠くに隔たって居る京師の同門同学の人々が、なぜか思い出されてならない。
    今日の昼間に、近所の子供達を呼び集めて、京の都の様子を語ったからであろうか。
    そう言えば、昔、若い頃、京で、知友と一緒に寺の御堂に登って、
    美しい八月十五日の月を眺めたことを思い出した。

○そう言えば、魯迅も浙江绍兴人である。彼の短編『故乡』は1921年41才の時の作である。賀知章の『回郷偶書』と魯迅の『故乡』に、何となく共通性を感じるのは私だけだろうか。

○その四明狂客、賀知章の賀秘監祠が月湖畔にあると言う。知ったのは寧波から帰ってからのことであった。全く以て残念な話である。どうせ、すぐに寧波を再度訪れるだろうから、その時、賀秘監祠を是非とも訪れたい。

○出来れば、その際、紹興にある『绍兴贺知章秘监祠』や『贺知章墓』も訪れたいものである。