○駿河国一の宮と甲斐国一の宮はともに「浅間神」を齋き祀る。もっとも、駿河国一の宮が「富士山本宮浅間大社」であるのに対し、甲斐国一の宮の方は、普通に「浅間神社」と名乗っている。
○これは表記もそうであるが、発音も違う。駿河国一の宮は「富士山本宮浅間大社」と表記し、その発音が『FUJISAN HONGU SENGENTAISHA』であることを、「富士山本宮浅間大社」のホームページが明らかにしている。それに対し、甲斐国一の宮の方は、『あさまじんじゃ』と称するらしい。
○御祭神については、「富士山本宮浅間大社」のホームページに、以下のようにある。
【主祭神】
木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやひめのみこと)(別称:浅間大神(あさまのおおかみ))
【相殿神】
瓊々杵尊(ににぎのみこと)
大山祇神(おおやまづみのかみ)
「日本(ひのもと)の 大和の国の 鎮めとも います神かも 宝とも なれる山かも 駿河なる
富士の高嶺は 見れど飽かぬかも」と万葉の歌人高橋蟲麻呂が詠んだ清らかで気高く美しい富士山。
この霊山を御神体として鎮まりますのは、浅間大神・木花之佐久夜毘売命にまします。
木花之佐久夜毘売命は、大山祇神の御息女にして大変美しく、天孫瓊々杵尊の皇后となられた御方
です。命はご懐妊の際、貞節を疑われたことから証を立てるため、戸の無い産屋を建て、周りに火を
放ち御出産になられました。そして、無事3人の皇子を生まれたという故事にちなみ、家庭円満・安
産・子安・水徳の神とされ、火難消除・安産・航海・漁業・農業・機織等の守護神として全国的な崇
敬を集めています。
木花という御神名から桜が御神木とされています。境内には500本もの桜樹が奉納されており、
春には桜の名所として賑わいます。また、申の日に富士山が現れた故事から神使いは猿といわれてい
ます。
○甲斐国一の宮「浅間神社」の御祭神も、『木花開耶姫命』である。富士山本宮浅間大社や、甲斐国一の宮浅間神社が浅間神として、木花之佐久夜毘売命(木花開耶姫命)を齋き祀るのは、どうしてだろうか。
○木花之佐久夜毘売命(木花開耶姫命)は、ご存じの通り、天孫降臨の神、彦瓊瓊杵尊の后である。富士山と日向神話とは何の結び付きも無い。
○おそらく、本来、浅間神として祭られたのは、山の神である大山祇神である可能性が高い。しかし、大山祇神では、山の神そのものの名であるからして、何か物足りなさを感じた誰かが、大山祇神の娘、木花之佐久夜毘売命(木花開耶姫命)にすることを提案したものと思われる。木花之佐久夜毘売命(木花開耶姫命)なら、天孫降臨の神、彦瓊瓊杵尊の后であるし、知名度は抜群である。それに華やかな富士山に最も似つかわしい神でもある。
○富士山が噴火した際、それを鎮めるために祭られたのが、富士山本宮浅間大社や、甲斐国一の宮浅間神社の浅間神であることを考慮すれば、硫黄島に発生した大山祇神は、それに最もふさわしい神と言うことになる。何故なら、硫黄島は、今でも常時、煙を揚げ、噴火の様相を見せているからである。
○日本一の富士山に硫黄島の三嶋神が齋き祀られていることは、非常に興味深い。硫黄岳神の御神徳・御威光が偲ばれると言うものである。
○蛇足ながら、「富士山本宮浅間大社」のホームページでは、
木花という御神名から桜が御神木とされています。境内には500本もの桜樹が奉納されており、
春には桜の名所として賑わいます。また、申の日に富士山が現れた故事から神使いは猿といわれてい
ます。
とするけれども、日本人が桜を愛でるようになったのは、平安時代からであって、それ以前ではあり得ない。そういうことを考慮するなら、木花之佐久夜毘売命(木花開耶姫命)は、やはり、「椿姫」とするのがふさわしい。詳しくは、本ブログ、書庫『枕崎探訪』の中、ブログ「椿姫」に書いているので、参照されたい。