◯『隠り口の初瀬』を歌った和歌は多い。インターネットで検索すると、「楽しい万葉集」と言うページには、次の和歌を案内している。
0045: やすみしし我が大君高照らす日の皇子.......(長歌)
0282: つのさはふ磐余も過ぎず泊瀬山いつかも越えむ夜は更けにつつ
0425: 川風の寒き泊瀬を嘆きつつ君が歩くに似る人も逢へや
0428: こもりくの初瀬の山の山の際にいさよふ雲は妹にかもあらむ
0912: 泊瀬女の造る木綿花み吉野の滝の水沫に咲きにけらずや
1095: 三諸つく三輪山見れば隠口の泊瀬の桧原思ほゆるかも
1270: こもりくの泊瀬の山に照る月は満ち欠けしけり人の常なき
1407: 隠口の泊瀬の山に霞立ちたなびく雲は妹にかもあらむ
1408: たはことかおよづれことかこもりくの泊瀬の山に廬りせりといふ
1593: 隠口の泊瀬の山は色づきぬ時雨の雨は降りにけらしも
2261: 泊瀬風かく吹く宵はいつまでか衣片敷き我がひとり寝む
2347: 海人小舟泊瀬の山に降る雪の日長く恋ひし君が音ぞする
2353: 泊瀬の斎槻が下に我が隠せる妻あかねさし照れる月夜に人見てむかも
2511: こもりくの豊泊瀬道は常滑のかしこき道ぞ恋ふらくはゆめ
3310: 隠口の泊瀬の国にさよばひに我が来れば.......(長歌)
3311: 隠口の泊瀬小国に妻しあれば石は踏めどもなほし来にけり
3312: 隠口の泊瀬小国によばひせす我が天皇よ.......(長歌)
3331: 隠口の泊瀬の山青旗の忍坂の山は走出の.......(長歌)
◯実際、長谷寺境内には、二つの万葉歌碑が存在すると、長谷寺のホームページでは案内する。それが次の和歌である。
1270: こもりくの泊瀬の山に照る月は満ち欠けしけり人の常なき
1593: 隠口の泊瀬の山は色づきぬ時雨の雨は降りにけらしも
◯当古代文化研究所では、『隠口の泊瀬の山は色づきぬ』和歌の万葉歌碑のみを見付ける事ができた、もっとも、和歌としては、『こもりくの泊瀬の山に照る月は』和歌の方が長谷寺に相応しい。長谷寺でもそう判断して、『こもりくの泊瀬の山に照る月は』和歌の歌碑は、仁王門前に存在するらしい。『隠口の泊瀬の山は色づきぬ』和歌の万葉歌碑は、登廊を上がった鐘楼のすぐ脇に存在した。