◯NHKスペシャル:古代史ミステリー 第1集 「邪馬台国の謎に迫る」が、昨日2024年3月17日の午後9:00 〜 午後9:50に、放送された。当古代文化研究所では、事前に、
ブログ『NHKスペシャル 新シリーズ「古代史ミステリー」 邪馬台国の女王』、
ブログ『<邪馬台国>吉野ヶ里&纒向遺跡の研究最前線取材で新事実紹介』、
ブログ『NHKスペシャル:古代史ミステリー 第1集 邪馬台国の謎に迫る』、
を書いて、NHKの事前予告を案内している。
◯これらを見ても判るように、NHKのこの番組に対する意気込みが見て取れる。これは大いに期待できる。そう思って、たいへん期待していた。NHKが最新の情報で、総力を挙げて制作した番組だと言うのだから、期待しないほうがおかしい。
◯番組を見た感想から述べると、正直、がっかりさせられた。番組冒頭から、
NHKスペシャル
古代史ミステリー 第1集
邪馬台国の謎に迫る
謎の女王・卑弥呼
発掘調査と最新科学が突き止めた新事実
人骨やDNA分析から見えてきた激動の東アジア
「三国志」に秘められた卑弥呼のグローバル戦略
最強の宿敵・狗奴国とのし烈な争い
未知の古墳のAI調査や大規模実験で徹底検証!
日本の歴史を変えた卑弥呼の波乱万丈のドラマを描く!
と次から次に魅惑的な言葉と情景が放送されて、驚いた。
◯まるで、子供騙しみたいな番組制作である。それでいて、中身がまるで無い。全然説得力が無いし、如何にも、テレビ局が面白、可笑しく作った番組で、これでは、誰も納得しない。何がドラマで、何処が本物の史実か、判断することすら、難しい。
◯NHKは、何か勘違いしている。邪馬台国や卑弥呼は、茶番では無い。歴とした歴史であり、史実なのである。誰が面白、可笑しく、放送して欲しいと願うだろうか。知りたいのは、真実である。そういう知的な番組を視聴者はNHKに期待して、受信料を支払っている。
◯税金を支払うのは国民の義務である。NHKの受信料は決して義務では無い。当然、それに相対する番組を受け取らない限り、受信料を支払う義務は無い。昨日の『NHKスペシャル:古代史ミステリー 第1集 ・邪馬台国の謎に迫る』を視聴して、がっかりさせられた。
◯NHKは、「発掘調査と最新科学が突き止めた新事実」と言うけれども、それは方法として、間違った学問である。と言うか、すでに、学問ですら、無い。何故なら、方法と手段がまるで違うからである。
◯もともと、邪馬台国も卑弥呼も、中国の正史「三国志」に書かれた史実である。したがって、邪馬台国や卑弥呼を論じようとすれば、まずは、真面目に「三国志」を読むことだろう。ところが、昨日の番組では「三国志」の記録は出て来ても、肝心の読み方は何一つ紹介されていない。
◯そんなおかしな話は無い。番組では何か「三国志」が間違っているかのような話が紹介された。「三国志」」の記述通りに行けば、太平洋の只中に達するみたいな。
◯それは読み手の方に問題があるからに他ならない。もともと、中国の史書は、中国の専門史家のみを、その読者対象としている。したがって、普通の人には、中国の史書は読めない。それだけのことである。
◯真面目に、「三国志」を読むと、「三国志」倭人条1986字の主題は、倭国三十国の案内あることが判る。それは、次のように案内される。
【渡海三国】
・狗邪韓国・対馬国・壱岐国
【北九州四国】
・末廬国・伊都国・奴国・不弥国
【中九州二十国】
・斯馬国・巳百支国・伊邪国・都支国・邇奴国・好古都国・不呼国
・姐奴国・対蘇国・蘇奴国・呼邑国・華奴蘇奴国・鬼国・為吾国・
・鬼奴国・邪馬国・躬臣国・巴利国・支惟国・烏奴国・(奴国)
【南九州三国】
・投馬国・邪馬台国・狗奴国
◯これが理解できない人は、「三国志」が読めていないに過ぎない。それほど、「三国志」を読むことは難しい。ただ、「三国志」を書いた陳寿は稀有の史家であって、様々な造作を加えて、「三国志』倭人条を書いている。簡単に「三国志」は読めない。
◯加えて、陳寿は、魏国の帯方郡から邪馬台国までも、次のように案内してみせる。
帯方郡⇒狗邪韓國=七千餘里
狗邪韓國⇒對馬國=千餘里
対馬國⇒一大國=千餘里
一大國⇒末盧國=千餘里
末盧國⇒伊都國=五百里
伊都國⇒奴國=百里
奴國⇒不彌國=百里
不彌國⇒投馬國=千五百余里
投馬國⇒邪馬壹國=八百余里
末盧國⇒邪馬壹國=二千餘里
◯何とも、表現の仕方が、あまりに立派過ぎて、誰もこれを読み解くことができない。何とも不幸な話である。文化が無いとは、こういうことを言う。
◯面白いことに、「三国志」が読めない日本人は、「三国志」が間違っていると明言して止まない。それが自分が愚かであることを証明していることに、まるで気付いていない。非文化人は、皆、そういう言い方をする。自分は間違っていない、相手が間違っていると。
◯よくよく考えて欲しい。陳寿は文字の国、中国で、正史を書くほどの人物である。その陳寿と自分のいずれが正しいか。最初からどちらが正しいかは、判っている。「三国志」は、世界の名著である。陳寿に敵う日本人など、何処にも居ない。
◯邪馬台国が何処に存在し、卑弥呼がどういう人物であったか。それはすでに発見されているし、卑弥呼は現在でも日本中に齋き祀られている。それを知らないのも、日本人である。卑弥呼の現住所が、
鹿児島県鹿児島郡三島村硫黄島大字長濱
であることも、はっきりしている。
◯真面目に「三国志」を読むと、そういうことが判る。陳寿は、「三国志」倭人条1986字を読みたければ、中国浙江省の会稽か寧波で読めと案内する。それが理解できない人には、残念ながら、「三国志」は読めない。「三国志」は、そういう書物なのである。
◯NHKに文化が無いから、こういうことになる。考古学者先生は、邪馬台国や卑弥呼に関しては、ズブの素人に過ぎない。何しろ、「三国志」が読めないのだから。もともと、中国の史書とは、そういうものである。
◯したがって、NHKに良識があれば、この話に首を突っ込むことはしない。素人のNHKが素人の考古学者先生と一緒になって、邪馬台国を論じる。それを茶番と言わないで、何と言う。「三国志」が読めない人は、「三国志」が読める人に従うしかない。それだけのことである。