拾得詩:世有多解人(拾50) | 古代文化研究所:第2室

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○項楚著「寒山詩註」は、寒山詩に続けて、拾得詩57首と佚詩6首を載せている。どうせなら、全部を訳し終えたい。それで、拾得詩の訳となる。今回が第50回で、『世有多解人(拾50)』詩になる。

  【原文】

      世有多解人(拾50)

    世有多解人   愚癡學閑文   不憂當來果   唯知造惡因

    見佛不解禮   覩僧倍生瞋   五逆十惡輩   三毒以爲鄰

    死去入地獄   未有出頭辰

  【書き下し文】

    世に多解なる人有り、

    愚癡は閑文を學ぶ。

    當來の果を憂へず、

    唯だ知る、惡因を造すを。

    佛を見るに、禮を解せず、

    僧を覩るに、瞋を生ずるを倍す。

    五逆十惡の輩らは、

    三毒を以て鄰と爲す。

    死去して地獄に入れば、

    未だ出頭の辰有らず。

  【我が儘勝手な私訳】

    世の中には、多知多識の人が居る反面、

    世の中では、貪・瞋・癡の三毒が広がっていることも事実である。

    したがって、現世に生きるのに、来世の成果を心配しないで、

    惡報の因となるものの芽を摘むことが大事であることを理解すべきである。

    仏様に出遭っても、仏法を理解しないし、

    修行を見ては、憎しみを倍増する。

    五種の大逆不道の罪や十種の惡業の罪は、

    貪・瞋・癡の三毒から生じるものである。

    一たび死んで、三悪趣の地獄へ入ることにでもなれば、

    永遠に三悪趣の地獄道から抜け出すことはできない。

○今回の『世有多解人(拾50)』詩は、寒山詩『世有多解人(091)』詩とほぼ同じものであることを、項楚著「寒山詩註」が指摘している。ただ、寒山詩『世有多解人(091)』詩は五言律詩であるのに対して、拾得詩『世有多解人(拾50)』詩は五言十行詩となっている。

○詩としてのまとまりも、寒山詩『世有多解人(091)』詩の方が良いような気がする。そういう意味では、拾得詩『世有多解人(拾50)』詩の方が原型なのかもしれない。