常建:題破山寺後禪院 | 古代文化研究所:第2室

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○すでに蘇州虎丘について、ブログ『蘇州虎丘』から『虎丘山风景名胜区』まで、14個も書いている。泰山登山旅行やシルクロードの旅などを、まだ放置したままである。早く先へ進まなくてはならないのだが、幾つか気になるものがあって、それをそのままにしておくのも忍びない。簡単に触れておきたい。

○まず、前々回取り上げた『虎丘:通幽軒』の曲径通幽から。日本では「曲径通幽」はあまり知られていない言葉である。唐代の詩人、常建の「題破山寺後禪院」詩が語源であるらしい。そのことについては、以下のブログですでに詳しく触れている。
  ・書庫「蘇州漫遊」:ブログ『虎丘:通幽軒』
  http://baike.baidu.com/item/%E9%A2%98%E7%A0%B4%E5%B1%B1%E5%AF%BA%E5%90%8E%E7%A6%85%E9%99%A2/2937931?fr=aladdin

○ただ、『曲径通幽』を理解するには、どうしても、常建の「題破山寺後禪院」詩を理解しない限り、判らない。しかし、常建の「題破山寺後禪院」詩の良い訳が存在するわけでもない。結局、自分で訳すしかない。

  【原文】
      題破山寺後禪院
         常建
    清晨入古寺
    初日照高林
    曲徑通幽處
    禪房花木深
    山光悅鳥性
    潭影空人心
    萬籟此俱寂
    但餘鐘磬音

  【書き下し文】
      破山寺の後禅院に題す
         常建
    清晨は古寺に入り、
    初日の高林を照らす。
    曲径の通幽する処、
    禅房の花木は深し。
    山の光は鳥性を悦ばせ、
    潭の影は人心を空しくす。
    万籟は此れ、寂を倶にし、
    但だ鐘磬の音を余すのみ。

  【我が儘勝手な私訳】
    朝、まだ太陽が出る前に、常熟市虞山北麓の興福寺へ参詣すれば、
    朝日が老樹の梢を美しく照らすのを見ることができる。
    曲がりくねった小道を辿って行くと、幽玄世界へと導かれ、
    破山寺の後禅院庭の花樹は、この世のものとも思われない。
    虞山へ降り注ぐ陽光は鳥たちを目覚めさせ、歌わせ、
    渓谷に水汲みに訪れる僧侶たちを仏法世界へと誘う。
    全ての自然界の物音は寂莫としたものとなり、
    その静寂の中に流れる音はただ、寺の鐘の音であり、磬の音のみである。
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