「閑話休題」(九二)

 

一、本年(二〇二六)七月二六日、世界遺産一覧表に「飛鳥・藤原の宮都」が登録されることが決定した。

 この地域は日本の古代史を語る上で、はずすことのできない重要な地域である。しかし、当時の建造物などは残されていない、という状況の中での登録決定であった。この点は先に決定を見た「法隆寺」などとの決定的な違いである。その違いを乗り越えての決定である。それに至るまでの関係者の努力は、相当大変なものがあったろうと推察される。

 先ずは古代史研究の一愛好家として、この決定を喜び、関係各位に称賛の拍手を送りたいと思う。

 

二、「飛鳥・藤原」の資産は、奈良盆地の南部に位置する丘陵に囲まれた飛鳥の小盆地と、その北西に接する藤原の平野部に展開する二つの宮都から成る、とされる。そこの十九の資産が構成資産とされている。内訳は、「宮殿・官衙跡が五」「仏教寺院跡が七」「墳墓が七」である。

 古代史を知る上で、いずれも重要かつ貴重な遺産群である。これらが、時代を越えて保護・保存されていくことは極めて意義深いことである。

 

三、文献資料の極めて少ない時代にあって、地表あるいは地中に残る痕跡に、どのような意義・意味を見出していくべきか。

 従来から多くの研究者が、様々な見解を述べてきていることも事実である。そして今後もそれは続いていくことであろう。その際、そうした痕跡が失われずに残されていることが重要なのである。

 今回の世界遺産登録は、そうしたことに大きく寄与するものと言えよう。慶賀に堪えない。