こーくすくりゅー雀鬼。
近所に昔からあるラーメン屋。 美味いという評判も、かといって、不味いという話もなく、最寄りの駅といえば、ふたつの駅の丁度、中間あたりで、立地も良いわけではなく、駐車場もない。 にもかかわらず、この店がつぶれないのは、
建物の二階に
雀荘があるから。
……などといわれていた。 雀荘に遊びに来たお客さんが、出前を取るので、それでなんとかなっているのだとか、みんなで好き勝手にいっていたのである。 実際、そのラーメン屋が混んでいるのを見たことがないし、ぼくを含めて、この店でラーメンを食べた人がいないので、なにか理由があるとしか思えないのだ。
そんな謎のラーメン屋、先日、久しぶりに店の前を通った。 コロナ禍で、大変であろうと思うのだが、相も変わらず、客の気配がないのに健在である。 雀荘の看板もまったく同じで、持ちつ持たれつで、頑張っているのだろう。 頑張っているのであろうと思ったのだが、二階の雀荘を見上げると……
吊り下げられた
サンドバッグ
窓際に並べられた
ボクシンググローブ。
これ
ボクシングジムじゃない?
二階の雀荘が、どうみてもボクシングジムなのである。 最近変わったばかりで、看板を外していないのかな? と思って、生まれて初めて、このビルの中をのぞいて見たのだが、入り口にもしっかりと雀荘の看板が出ている。 どういうこと?
ポン!
リーチ!!
ロン!!!
ってこと?
まぁ、いつのまにか雀荘がつぶれて、雑なジムオーナーが、看板も店の入り口もまったく変えずにボクシングジムを始めただけだとは思うのだが、ひょっとすると、なぜだかつぶれないラーメン屋の上で、ボクシングと麻雀が融合した、謎のスポーツが誕生しているのかも知れない。 そう考えると、…… 特になにも感情が湧いてこない、ぼくなのであった。
あるいは
雀荘という名の
ボクシングジム
ぼくに人生につづく。