きんこん。 | しるそばのうそ日記

きんこん。

  子どもの頃、自転車というのは、様々なこだわりが現れるものであった。 スタンドを一本足にしたり、スポークに珍しい色のカラーボールを挟み込んでみたりと、実用性とは関係ない方向に、こだわりを爆発させていた。
 

 

 

 

 

 

 


キンコーン
 

 

 

 

 

 


キンコーン
 

 

 

 

 

 


  自転車のベルの音である。 ぼくが子どもの頃も、これはこだわりのポイントであった。 元から付いている、チリンチリンなるヤツは、軽蔑の対象ですらあって、一発ずつ、チーンとなるヤツに変えるのが基本、バカデカくて、キンコンとなるヤツを付けていると、「こいつは違うな」と思われたものである。
 
  実際、近所の公園でも、キンコンなるベルを付けた子供が、まわりの子供たちに自転車を自慢していた。
 
「なにこれ?!」
「付け替えた。」
「かっけぇ!!」
「いいでしょ?」
 
  よ~く考えれば、別に格好良くないことに気が付くはずなのだが、脳をほとんど使っていない彼らには、気が付くことができない。
 

 

 

 

 

 


「なぁなぁ! 見て見て!」
 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

キンコーン
 

 

 

 

 

 

 

キンコーン
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キンコーン

 

 

 

 

 

 

 

キンコーン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラマン。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


  なるほど。 ベルの音をカラータイマーに見立てたわけか。 このベルに変えれば、ウルトラマンになれるという特典が付くと。 まったく必要のない思い付きである。 思い付きではあるのだが……
 
「すげー!!」
「かっけぇー!!」
「いいなぁ!!」
 
  子供たちは盛り上がっている。 絶対に良くないぞ子供たち。 とはいえ、自転車のベルを買い替えただけで、ここまで盛り上がれるのならば、買い替えた甲斐があるというものであろう。 あるというものではあるのだが、少年。 カラータイマーがキンコンキンコンなっているということは
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ウルトラマン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死にかけてないか?
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


  ……とだけはいっておこう。
 

 

 

 

 

 


ぼくの人生につづく。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

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