
雲がぐんぐん海から山へ流れていく
のどかな昼下がり…

森の奥の小さな池の水面は
きらきらと輝いている

木々の葉のささやき声を聞きながら

ひとりで本を読む

たまに葉っぱが落ちてきて

本にはさまるのをはらいながら

めくるめく美しい妖精の物語のなか旅をする

いつしか浅い眠りに誘われて…

物語のなかの主人公になったわたし

頭には森の精の冠

木々の話す言葉がわかり
花たちと歌を歌える

この森の秘密を木の長老から
教えてもらえるという瞬間…

鳥が飛び立つ羽音で目を覚ますと

少し日が落ちた森の中
頭には当然冠はなく

でも、可憐なピンク色の花が一輪
夢の名残のように頭にのっていて

不思議なことに
まだ木々の話す言葉が少しわかった

これがわたしの小さな不思議な体験
誰にも話さないわたしだけの秘密