車を停めた場所に向かって歩く二人。
「テギョンさん、ひとつお伺いいたします。どうして私がテギョンさんのお父様とお会いしなければならないんですか?」
「どうして?それぐらい考えればわかるだろ。なんで俺がそんなことを説明しなければならないんだ。自分で考えろ」
「考えましたけど、わかりません」
テギョン、その答えに一瞬絶句。
「…。わからないとおっしゃる。俺の方がお前の脳ミソに疑問を感じる。では聞こう。お前と俺の関係はなんだ?」
「うぅーん?子弟でもないし…上司と部下?」
「………。」
更なるミニョの天然攻撃にテギョンが二の句も告げられずいると、ミニョがにっかりと笑った。
「嘘ですよ。事情は何と無くわかります。そんなにびっくりさせてしまいましたか?」
「嘘とはなななんだ?コミニョ。俺を試したのか?」
ミニョなら、この手のことに疎いとは思えども、自分が相手を思うほど思われているのか不安な心情を見透かされたようで、極力平静を装いつつテギョンは珍しく赤面した。
「だって、予めメールを送ってくださったにしても、あまりに唐突すぎます。これぐらいの仕返しは許して下さいますよね」
「ふん…今回だけだ。特別に許してやってもいい」
些細なテギョンのお仕置きはミニョを懲らしめるには十分だったし、まだ問題はこれからだ。
少しやり過ぎたかもしれないとテギョンもちょっぴり反省した。
「でも…テギョンさんのお父様にお会いして私は何を話せば良いのでしょうか?」
「何って…。ほら乗れ」
車の横に着くとテギョンは助手席のドアを開けてミニョに乗り込むよう促した。
シートベルトを閉めながら、ミニョはうーんと唸りながら考える。
「やっぱり、どうしても今日お会いしなければなりませんか?」
不安げな表情を浮かべたミニョ、テギョンに懇願するような目でいう。
「親父のスケジュール上、今日でなければダメだそうだ」
「は…あ…、お忙しいのでね」
ミニョは深いため息をついた。
「不安か?」
「はい。とてもこんなの初めですし…」
「俺だって初めてだ。お前と俺は今、付き合ってるだろ?これからも付き合うだろ。」
「そうですね。そう…なんですよね」
テギョンが確認するように言うのに対し、てへ、とミニョが呑気な照れ笑いをする。
「俺の父親の耳に、俺がライブでお前に告白したことが入ったらしい」
長く月日が経った今でも伝説として語られるA.N.JELLコンサートで、テギョンがした告白は全国的どころか世界中のA.N.JELLファンの耳に届いた。
それがテギョンの親の耳に入るのは至極自然なことだ。
その相手がどんな女性なのか、親として気になって当然だろう。
とはいえ、テギョンの気持ちがどうあれ、彼の親に気に入って貰えるかどうかとなると話は別だ。
ミニョは自分の出生や生い立ちを恥じている訳では決してないが、親の世代はとかく世間体を気にするものだ。
気に入って貰えるどころか、テギョンの親のお眼鏡にかなうような自信は無かった。
ミニョの顔つきが見るからに暗くなった。
「コミニョ、心配するな。俺の付き合っている女はお前だと紹介するだけだ。堅苦しく考えるな」
「そうおっしゃいましても…緊張します。段々ドキドキが盛り上がってきました。おさまりそうにありません」
ミニョが心臓のあたりに両手をあてて息苦しそうにしている。
『やっぱり付き合うのはやめると言われても困るしな』
走り出した車はある場所に差し掛かり、テギョンはミニョに車を降りるように言った。
「もう、お父様のお家に着いたんですか?」
「いや、違う。行く前にちょっと深呼吸していけ」
スタスタと歩くテギョンの後ろをミニョがトコトコと着いて行くと、見覚えのある場所に。
「あ、ここは!」
「覚えてるか?」
「当たり前です。ここでテギョンさんに意地悪されましたから」
余計な事を…と誰に言うでもなく文句を付けチッと舌打ちするテギョン。
ここは、二人が出会って間もない頃。
テギョンがミニョの事を大嫌いだった時の事。
誠意を見せるといったのに、その証のミニョの大事な指輪を投げ捨てると見せかけてー、実際は捨ててなくて…。
そうとは知らないミニョが必死で一晩中冷たい水の中、あるはずもない指輪を探しまくった池。
テギョンが初めて最初にミニョの根性を認めた場所。
「あの時は本当に大変でした」
この思いではあまり言うと、テギョンを責めることになりかねないので、さらっとこのくらいにしておいた。
「悪かったな。あの時はお前がどんな奴かも判らなかったし…女が男のふりをして俺たちのバンドに加入するなんて、どうしても許せるものじゃなかったからな」
「無謀でしたね、私も信じられません」
ミニョはふふっと笑う。
「だろう!お前は信じられない女なんだ。お前ぐらい図太い女を見たのは初めてだ。そのお前が俺の親に会うくらいで何をビビる要素があるのか?俺はそれが信じられない」
「そう言われれば、そうかも…」
単純である。ミニョが考え直している。
「お前のど根性をもう一度俺に見せてみろ。ほら大きく息を吸い込んで全部吐け。深呼吸だ」
テギョンはミニョの肩をポンと叩いた。
両腕を広げたり狭めたり、本気で深呼吸するミニョ、何となく落ち着いてきた。
「そうですよね!別に結婚する訳じゃないんですものね。気を楽にして臨みます」
「あぁ?」
それまで年長者らしくミニョを諭していたのに、テギョンさん、一変して一気にむくれた子供の顔になった。
「テギョンさん、ひとつお伺いいたします。どうして私がテギョンさんのお父様とお会いしなければならないんですか?」
「どうして?それぐらい考えればわかるだろ。なんで俺がそんなことを説明しなければならないんだ。自分で考えろ」
「考えましたけど、わかりません」
テギョン、その答えに一瞬絶句。
「…。わからないとおっしゃる。俺の方がお前の脳ミソに疑問を感じる。では聞こう。お前と俺の関係はなんだ?」
「うぅーん?子弟でもないし…上司と部下?」
「………。」
更なるミニョの天然攻撃にテギョンが二の句も告げられずいると、ミニョがにっかりと笑った。
「嘘ですよ。事情は何と無くわかります。そんなにびっくりさせてしまいましたか?」
「嘘とはなななんだ?コミニョ。俺を試したのか?」
ミニョなら、この手のことに疎いとは思えども、自分が相手を思うほど思われているのか不安な心情を見透かされたようで、極力平静を装いつつテギョンは珍しく赤面した。
「だって、予めメールを送ってくださったにしても、あまりに唐突すぎます。これぐらいの仕返しは許して下さいますよね」
「ふん…今回だけだ。特別に許してやってもいい」
些細なテギョンのお仕置きはミニョを懲らしめるには十分だったし、まだ問題はこれからだ。
少しやり過ぎたかもしれないとテギョンもちょっぴり反省した。
「でも…テギョンさんのお父様にお会いして私は何を話せば良いのでしょうか?」
「何って…。ほら乗れ」
車の横に着くとテギョンは助手席のドアを開けてミニョに乗り込むよう促した。
シートベルトを閉めながら、ミニョはうーんと唸りながら考える。
「やっぱり、どうしても今日お会いしなければなりませんか?」
不安げな表情を浮かべたミニョ、テギョンに懇願するような目でいう。
「親父のスケジュール上、今日でなければダメだそうだ」
「は…あ…、お忙しいのでね」
ミニョは深いため息をついた。
「不安か?」
「はい。とてもこんなの初めですし…」
「俺だって初めてだ。お前と俺は今、付き合ってるだろ?これからも付き合うだろ。」
「そうですね。そう…なんですよね」
テギョンが確認するように言うのに対し、てへ、とミニョが呑気な照れ笑いをする。
「俺の父親の耳に、俺がライブでお前に告白したことが入ったらしい」
長く月日が経った今でも伝説として語られるA.N.JELLコンサートで、テギョンがした告白は全国的どころか世界中のA.N.JELLファンの耳に届いた。
それがテギョンの親の耳に入るのは至極自然なことだ。
その相手がどんな女性なのか、親として気になって当然だろう。
とはいえ、テギョンの気持ちがどうあれ、彼の親に気に入って貰えるかどうかとなると話は別だ。
ミニョは自分の出生や生い立ちを恥じている訳では決してないが、親の世代はとかく世間体を気にするものだ。
気に入って貰えるどころか、テギョンの親のお眼鏡にかなうような自信は無かった。
ミニョの顔つきが見るからに暗くなった。
「コミニョ、心配するな。俺の付き合っている女はお前だと紹介するだけだ。堅苦しく考えるな」
「そうおっしゃいましても…緊張します。段々ドキドキが盛り上がってきました。おさまりそうにありません」
ミニョが心臓のあたりに両手をあてて息苦しそうにしている。
『やっぱり付き合うのはやめると言われても困るしな』
走り出した車はある場所に差し掛かり、テギョンはミニョに車を降りるように言った。
「もう、お父様のお家に着いたんですか?」
「いや、違う。行く前にちょっと深呼吸していけ」
スタスタと歩くテギョンの後ろをミニョがトコトコと着いて行くと、見覚えのある場所に。
「あ、ここは!」
「覚えてるか?」
「当たり前です。ここでテギョンさんに意地悪されましたから」
余計な事を…と誰に言うでもなく文句を付けチッと舌打ちするテギョン。
ここは、二人が出会って間もない頃。
テギョンがミニョの事を大嫌いだった時の事。
誠意を見せるといったのに、その証のミニョの大事な指輪を投げ捨てると見せかけてー、実際は捨ててなくて…。
そうとは知らないミニョが必死で一晩中冷たい水の中、あるはずもない指輪を探しまくった池。
テギョンが初めて最初にミニョの根性を認めた場所。
「あの時は本当に大変でした」
この思いではあまり言うと、テギョンを責めることになりかねないので、さらっとこのくらいにしておいた。
「悪かったな。あの時はお前がどんな奴かも判らなかったし…女が男のふりをして俺たちのバンドに加入するなんて、どうしても許せるものじゃなかったからな」
「無謀でしたね、私も信じられません」
ミニョはふふっと笑う。
「だろう!お前は信じられない女なんだ。お前ぐらい図太い女を見たのは初めてだ。そのお前が俺の親に会うくらいで何をビビる要素があるのか?俺はそれが信じられない」
「そう言われれば、そうかも…」
単純である。ミニョが考え直している。
「お前のど根性をもう一度俺に見せてみろ。ほら大きく息を吸い込んで全部吐け。深呼吸だ」
テギョンはミニョの肩をポンと叩いた。
両腕を広げたり狭めたり、本気で深呼吸するミニョ、何となく落ち着いてきた。
「そうですよね!別に結婚する訳じゃないんですものね。気を楽にして臨みます」
「あぁ?」
それまで年長者らしくミニョを諭していたのに、テギョンさん、一変して一気にむくれた子供の顔になった。