おふらんす「ここ」地方は朝夕はもう既に氷点下の日も少なくない。

積雪のあるエリアではないのだけれど 内陸特有の底冷え感がハンパない。

 

どうせ家でお籠りさん生活の私は外が氷点下であろうとなかろうと

さほど影響は受けないので

朝夕の空気がギンギンに冷えた感じ満載の

靄や霧が作り出す幻想的な風景を見られるこの時季が嫌いじゃない

仕事に出る夫は気が滅入るというので
ぬくぬくさせてもらっている身分
あんまり大っぴらに「好き」とは言えぬが・・・・。

 

こんな時季はお外が立派な冷蔵庫の役目を役目も果たしてくれるので

ちょっと得した気分にさえなる

暖房の効いた部屋では長持ちせぬ 花々も夕刻になるとテラスに出す。

 

日本の生花店と違い

中国やフランスの花屋の多く(パリは別だと思っているが)が

市場から店に仕入れた後の「一手間」をほどこしていない場合が多いらしく

マメに水切りしても花が開ききる前に枯れてしまうことが少なくない

というか病気が発生する?感じ。

 

できるだけ

購入してきた花を早めに水切りし、

薬剤を入れた水に挿したとて長持ちせぬので

最近では高いお金をださずに

安価な店で週に1度かい足すが日常になっているのだけれど・・・・

 

この時季

夕刻に冷蔵庫よりも冷たいお外に置くことで

いつもの花もかなり長持ち

おかげで ゆっくり・・・・と開花し

いつものこの薔薇もちゃんと開き切ると

ここまで大きくなるんだ!? と

ちょっとした感動さえ運んできてくれた

 

この作業を教えてくれたのは

アルザスで1番とされるドメーヌの年老いたマダムだった・・・・。

 

 

 

9年前このドメーヌの子女で

天才と謳われたワインの作り手の急逝を知り
長年お付き合いのあった夫が墓参に訪れたい・・・・と

トゥッサンのヴァカンスを利用して家族3人でご挨拶に上がったのだった。

 


葡萄畑内に設えられているファミリーの墓の前に椅子を置いて
マダムが無言で亡き娘さんに語り掛けている背中をみて
私と娘は胸がつまり涙を浮かべた

「1分でも1秒でも親より長く生きること
それが最低限の親孝行だよ・・・・」

そういう私の語り掛けに

「ん・・・・・」 
とうなずいた娘


あの日の光景は何故か脳裏にハッキリと刻まれていた


そのマダム
もうかなりの齢ではあったが
おぼつかない足取りで
室内のアチコチに飾られた白薔薇を活けた花瓶を1つ1つ
室外に出していたのも印象的で・・・・・

「こうすると長生きするから・・・・・」

そう私に説明してくれていた

その翌年(だったかな)
娘さんの後を追うかのように
他界された・・・・と夫から報せを受けた


逆縁ほど惨いことはない・・・・

生きる縁を失くされてしまったのか
でも 娘さんのもとにゆけることは幸せだったんだろう・・・・


「逆縁」なんぞ 当時の私は己には無縁だと信じて疑わず
否、 縁の有無さえ思い浮かべることさえ皆無で

無責任に「大変だったろうな」 という感想を抱いただけだった。

 

 

 

勿論
いつかマダムの墓参にも・・・・と思いつつ

我々はその後中国へ異動
3年して娘を亡くし、

直後から世界はコロナ過へ・・・・・・

と なかなかアルザスへの再訪叶わず
今日を迎えたのだった


 

9年ぶり
ドメーヌの室内はあの日のままで
当主であるマダムKの笑顔もそのままで

 

でも私達は
母を亡くし(マダムK)
娘を亡くし

あの時共に食卓を囲んだメンバー5名の内2名も不在になってしまったことに
静かに思いを馳せた

 

 

 

 

(近くの花屋でリース型のお墓へのお供えをつくっていただいた)

 



久方ぶりの再会に

湿っぽい話題は・・・・・と
何となく回避はしていたものの
結局行きつく先は 「そこ」

でも 

 

「思い出話をするとき
必ず その傍らには「その人」がいるのだ・・・・・」 と
マダムKは優しく語ってくれるのだった

国を越えて
文化を越えて

 

何度となく言ってもらえた優しい言葉

 

 

思い出すとき

語り掛けるとき

 

その人にちゃんと声は届いている

 

 

 

そうなんだよね・・・・・

 

 

多分 

 

私の声は届いている

 

 

見えないだけで

気配を感じないだけで

声は届いているのだろう・・・・・

 

 

 

〇〇ちゃん 大好き~

愛してるよ~

 

 

 

生前も

没後も

飽きることなく

毎日毎日 

毎時毎時

自分でも呆れるくらい

 

彼女が私の胎内に宿ってから

今日まで

何万回(いえ その10倍?100倍?)口にしているかわからない愛の言葉

 

相変わらずウザイね・・・・・・と

呆れているのか苦笑しているのかはわからないけれど

話しかけている間は
あちら側とこちら側を忙しなく移動してくれているのかな・・・・・・

 

そうだといいな・・・・・



答え合わせまでに

まだまだ時間はあるのだろうけれど

 

それまでは都合よく解釈しよう・・・・

 

 

そう思った