「あ。」
声が漏れる。
視線の先には春先には似合わない厚手のコートを着た男。
彼は私の声に気付くと一瞬こちらを見たが、直ぐに余所を向いた。
ちょっとだけイラっと来たが、奴はそういう男なので気にしない。
「おーい。」
「・・・何だ?」
「よくも無視してくれたな。」
「はっ、被害妄想が激しいな。
俺は今コンタクトをしていない、お前だと認識していなかった。」
嘘吐け。コンタクトの件は信じてやる。
でも私だと解かったくせに、認識したくせに、無視したんだ。
こいつは昔からそうだ。自分からは絶対に声を掛けない。
「うそつき。雰囲気で私だって解かったくせに。」
「自意識過剰。お前みたいな凡人は人込みで紛れる。」
「この野郎。」
「何だ、女郎。」
一瞬の沈黙。後に溜め息。
何で休日に偶然見慣れた顔と鉢合わせして揉めねばならないんだ。
「で?一人で何してたの?」
「お前こそ一人だろ。待ち合わせか?」
「質問を質問で返すんじゃなーい。先に質問したのは私でしょ!」
「うっぜ。」
「答えなさいよ。それとも何?言いにくいこと?」
「・・・健康維持の為の散歩。」
「へーえー、こんな連休で混み合うショッピング街を?」
怪しむように睨んでやると、すっと視線を逸らされた。
なるほど、この野郎は言うつもりがないらしい。
沈黙、というのも幼馴染の私には回答をしていることになってしまうわけで、
「そう言えばさ、」
びくり、奴の肩が揺れるのを横目で見ながら口角を上げる。
ははーん、そんなに私に言い当てられたくない事だって事は、正解は一つ。
「彼女さんと付き合いだして、明日で一年じゃなかった?」
「!」
ほーら、当たり。
「何?贈り物でも考えてたの?物ぐさのアンタが珍しー。」
「・・・うっせ。」
幼馴染だけど、こんな風に照れてる顔を見たのは初めてだった。
傍に居るのが当たり前みたいに育ってきたけど、こんな顔もするんだなぁ。
今更、こいつの新たな一面を見つけたって良い事なんてないけど。
「仕方ないなぁ。幼馴染の私が、一肌脱いであげましょう!」
「は?」
「アンタ、女の子の欲しがる物なんてわかんないでしょー?」
「要らね、お前センス悪いし。」
「殴る。」
こうやってふざけてられるのは、目の前に彼女さんが居ないからであって。
でも、こいつの隣に居たのはずっと私だったわけで。
恋愛において、時間なんて関係ないんだなぁ。
苦いものが広がった胸をぎゅっと握り締めて、
そっと奴の隣に並んだ。
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はい、おっひさしぶりです。あはは。
リハビリで書いたけど、あはは。
もうね、何を書きたかったのが思い出せないんだわ。