山倉あゆみという人
ずっと ずっと後悔していた。
とスイカがまさかのゲシュタルト崩壊。
正直、パッケージというものは、いくらでもお金を掛けることができる。
どんな顔して、贈られた人の前に現れたいか、考える。
まずは形状から入ることにした。
そこに、対比的な、箔押しをもってくることにした。
今回のスイカの産地、西蒲区越前浜では毎年4月、
どこよりも早く地域の小さな打ち上げ花火大会がおこなわれるそう。
地域の子供たちや、お年寄りに向けた、あたたかなメッセージと共に
打ち上げられる、あたたかな花火。
消してみても、消えないものにはやはり強い力があると思う。
パッケージのストーリーも、この花火に重ねることに決めた。
弾けるほどのみずみずしさ、夏の一瞬の花火
食べた人のはじける笑顔。それぞれの景色。
スイカの種を見ながら、手書きでいびつでかわいらしい涙型をかいてみる。
それを弾けるような花火に見立てた。
周りの景色に合わせて、銀色の箔押しに映し出される色が七色に変わる。
花火玉のような大きさのスイカ。
それぞれのひと夏の思い出を、閉じ込めた花火玉。
それぞれの色を映し出し、花火のように打ち上げて欲しいと思った。
そして、スイカには前からやってみたかった、目をつけた。
畑でいつも、きっと空を見ているスイカ。
雨の日も、風の日も、西蒲区の広い空や、怖いくらい綺麗な夕暮れも。
そして、きっと花火も。
キラキラした眼差しのモデルは、生産者の小林さん。
小林さん、覚えているかな。はじめに送ったメッセージ。
スイカの目にはパッケージと同じ花火がうつりこんでいて、
スイカも、きっと花火を見ているね。
様々なヒント、デザインの方向性を導き出してくれる山倉さん。
素晴らしいディレクター・プロデューサーだと、今回心から思いました。
厳しい意見も想いを持って伝えることが出来る彼女は、
自分には常に、もっと厳しい言葉を何度も投げかけていると思う。
葛藤のある人は、とても魅力的で、さみしく、やさしく、
一人で戦う強さを持っている。
彼女もそう感じさせる一人。
同じ女性として、子供を持ち仕事をするものとして、
とても尊敬する。
そして、あたたかい微笑みで、チームをまとめてくれるいわむろやの小倉さん。
果てしなくさわやかな笑顔の小林さん。
へたくそな進め方ですみません。ハラハラさせてごめんなさい。
今回、一緒にお仕事をさせていただき、
本当に多くのことを学ばせていただき、
ありがとうございました。
あっという間の2ヶ月。
私にとっても、花火のような素敵な仕事でした。
一瞬のおもいで。一旬のおもいで。
このスイカを手にとった人に、沢山の笑顔がはじけますように。
farmer:小林竜典(こばやし農園)
Designer:あだちあさみ(siroionaka design)
Coordinator:小倉壮平(いわむろや)
director:山倉 あゆみ(foodrop)
私とアンパンマン
これは、私の宝物のひとつ。アンパンマンの作者、やなせたかしさんの書かれたものです。
やなせさんは、私の心の師匠でした。
昨日、やなせたかしさんが、94歳でお亡くなりになって
河合隼雄さんに続いて、私のもうひとりの心の師匠が亡くなられてしまいました。
「もし自信をなくして くじけそうになったら いいことだけ いいことだけ 思い出せ」
「大事なものわすれて べそかきになったら 好きな人と 好きな人と 手をつなげ」
「楽しいこといっぱい でもさびしくなったら 愛すること愛すること すてないで」
これは、やなせたかしさんの作詞された、アンパンマンたいそうの歌詞です。
私は今まで、この言葉にどれだけ支えられたか 分からないです。
もともと、とてもネガティブな私は、気持ちを上げていくのが苦手で、
そんなときは、やなせさんの言葉の杖をたくさん借りました。
高校の頃、一人でアンパンマン展に行き、
子供の頃から見ていたアンパンマンへのやなせさんへの想いを知ってから、
アンパンマンのことが、とても好きになりました。
それから、初版本を買ったり、絵本を集めたり、
アンパンマンが好きな私に、
みんなが色々なアンパンマンのプレゼントをくれたり、
私が事故にあったときは、小さく口ずさんで辛さを紛らわしたり
子供が生まれてからは、一緒に歌を歌ったり
仕事の前はやなせさんの本を読んで、勇気を出したり、
いつも支えてもらい、私は アンパンマンと一緒に大きくなった気がします。
一寸先は闇と言いますが、一寸先は光かもしれない
人生というのは思うようにはいきません
だからこそ面白くて、苦しさも、きっと楽しみのうち
それが生きているということを、思い出させてくれる、
やなせさんはこれからも私のそんな大切な人です。
私は、デザイナーという仕事をしていますが、
それはなぜかというと、
絵が好きだということ、 ものを作ることが好きだということと
そして、やっぱり誰かの役に立ちたいということ、
人の喜ぶ顔が見たいということが一番です。
それだけじゃ駄目なんだろうけど、やっぱりこれが一番で、
全部がうまくいくことなんて無いのだから、
一番大切なものを大切にしていれば、きっと迷わないと思います。
アンパンマンや、やなせさんのように、
元気や、幸せを与えられる、そんな仕事がしたいです。
一度は会いたかった方の一人でした。
それだけがとても残念です。