遅れてすまそ
「……ふぅ」
「いい感じに出来たね」
俺たちは理子姉の部屋にてバンドの練習をしていた。何故かと言えばそれは簡単な理由で、美香姉が理子姉の曲を演奏したいと言ったからである。
百合姉がドラム、理子姉がボーカル、愛理姉と俺はエレキ、美香姉はベースだ。
「美香ちゃんがぐったりだね」
「……つかれた」
そりゃ二時間もやっていたら疲れるだろう。
美香姉はベースを置くと、理子姉のベッドに横になって動かなくなってしまった。すやすやと眠っている様子がまたかわいらしい。
「それじゃあ、私たちも休みましょうか」
「そうだな」
百合姉の提案で、しばらく休憩を入れることにした。
愛理姉と理子姉が買出しに行ってしまったため、理子姉の部屋には俺と百合姉と美香姉が残った。と言っても、美香姉は寝ているため、実質俺と百合姉だけだが。
「……ねえ、将」
「何だ? 百合姉」
椅子に座っている俺に百合姉が迫ってきた。一瞬の間に百合姉に動きを封じられてしまい、強く抱かれてしまった。む、胸。
俺の膝の上に百合姉がこっち向きでまたがった。胸。
「百合姉、何を」
「最近将に構っていなかったから……ね」
百合姉の甘い吐息が俺の額にかかる。
押しのけようとしたが、百合姉から流れて来るフェロモンが俺の理性を木端微塵にしてしまう。そうして俺は、百合姉と互いに抱き合うことになっていた。
目を見つめるだけで、体中が興奮してしまう。
「ねぇ……このまま二人で、大人の階段上っちゃう?」
「み、美香姉がそこにいるし……」
「いいのいいの」
その瞬間、部屋のドアががちゃりと開いた。
ドアを開けたのは、この前姉さんたちを借りていったリリィさんである。
「……ふぇぇぇ」
「どうしたの? 悪魔だって、こういうことするんでしょ?」
「そ、それは違う悪魔で……あわわ」
いいところを邪魔された感がとてつもないが、リリィさんの姿が見られたので良かったことにしておこう。しかしあれだ。リリィさんもきわどい格好をしておりますな。
「将、何鼻の下伸ばしてるの」
「す、すいません百合姉」
「いやぁ、いきなりきてごめんなさいです」
頭をかいかいしながらリリィさんは謝る。かわええ。
「実は、この間理子さんを借りた時の評判が良くて、こちらでライブを開いてもらえないかな、と思って来たんです」
「ライブ?」
俺と百合姉が顔を見合わせていると、理子姉と愛理姉が帰ってきた。
リリィさんの姿を見ると少し驚いたが、あいさつをして俺たちの隣に座る。
「頼めませんかねぇ、理子さん」
「うーん……設備は不安だけど、やるしかないよね」
そうして、夏は魔界で理子姉のライブを開くことになった。