『宗教審議会』の提唱

 

 今日の物質文明というものは、ひじょうに、極度までといっていいほど進んでおります。私は地方へ行くたびに、それを強く感ずるのであります。大阪へ飛行機で行けば、一時間四十分、北海道まででも三時間、また汽車に乗って大阪にまいりましても、朝乗って夕方に着く。まことに便利な世界になったものだと思うのであります。

 

 また、家庭的にみましても、電気せんたく機、あるいはラジオ、テレビ……。これを、今から百年前の人が突然に現われて、この物質文明の世界へきたとしましたならば、どれくらい驚くことでありましょう。また、百年前の人に今の世界の話をしましたならば、さぞや、オトギ話の国のことのように思うてうらやましがったであろうと思うのであります。

 

 しかるに、人類の幸福は、物質文明によってなされたのでありましょうか。いな、むしろ幸福の総量は、減っているとしか考えられないのであります。かえって、物質文明のおかげによって、悲劇がずいぶん生まれているのです。

 

 また瞋、怒ることです。また貪、むさぼりです。また癡、おろかさ、あるいは自慢、あるいは疑い、こういうような、われわれに不幸をもたらすわれわれの命の作用が、ひとつも解決されてはおりません。これは、なにによることであろうか。

 

 すなわち、物質文明もわれわれに幸福をもたらすと同時に、このわれわれの心の状態における幸福をもたらすものは、宗教でなければならないのであります。

 それは迷信や、観念的な宗教でなく、ただ修養的な宗教でもありません。そういうもののみが日本にあるがゆえに、ほんとうの幸福というものを、日本民衆はつかめないのであります。いな、世界じゅうがそうなのであります。

 

 ここに根本的に、抜本的に人類に幸福を与える宗教は、わが日蓮正宗以外にないのであります。観念論でもなく、迷信でもなく、修養的でもありません。生きた宗教、生活に飛び込み、生活ににじむ宗教であります。だが、これを日本の民衆に、どうして納得させるかということが問題なのであります。

 

 これは、皆さまの清き信心より出ずるところの体験による以外にはないのです。

あなたがたが強信な信心によりまして、ひとりひとりが幸福の体験をつかむとき、これを日本民衆が納得する時こそ広宣流布の日であり、戒壇建立の日となるのであります。

ただ、こう申しますれば、ひとりよがりのことばのように、今のジャーナリストはとるのであります。しかし、私は、断固として断言する確信をもっております。

 

 今、宗教の善悪、邪正をとろうとして、そうして、これを哲学的に説明しても納得できないのが今の日本人であります。なぜかならば、彼らには宗教哲学のなんたるかも知らない。日本民衆に宗教哲学の教育がないからなのです。

 

 ですから、いかに社会的にりっぱな地位をもつ人でありましても、宗教ともなれば、幼稚園も同様であります。その幼稚園の頭をもって、最高の仏教哲学をもつ日蓮正宗を批判するのは、生意気であり、彼らはわからないのであります

 

 だが、わからんといって、わからんままにしておくわけにはいかない。どこまでも、わかるまで納得させようと努力しますが、もし、ここに宗教審議会とでも仮に名前をつけたものができて、宗教に善悪、邪正があるということを、日本民衆が調ベるという機運の起こる日が、あってほしいと思います。

 

 この方法は、以前に何度も述べましたが、科学的であればよいのです。あたかも、農業学校で米の品質を調べたり、研究したりするように、ある人を百軒、日蓮正宗の信心をさせて、また百軒を同じく立正佼成会の信心をさせる。また同じく霊友会の信心をさせる。また、念仏宗の信心をさせる。また、している人でもよい。それを一年間したら、生活がどれほど変わったかという記録をとればよいのです。ことし百軒、来年百軒、再来年百軒と、二十年も、まじめに国家、あるいは日本民衆のある団体が研究するならば、記録のうえにはっきりと証拠が現われる。その時こそ、わが日蓮正宗の信者が、どれほどしあわせになっており、彼ら邪宗の信者が、どれくらい不幸に落ちているかということが、係数的にはっきり現われてくる。

 

 おそらく、そういうことをやると、わが日蓮正宗に向かって挑戦してくる宗教団体はないと思う。しかし、オッチョコチョイがいてやるとなれば、またおもしろいものだ。また、国家的にやるとなれば、まだおもしろい、はっきりするのですから。正邪が決まるのです。そういう時勢も、いつかくるであろうことを望んでおります。

 

 また、その時代までには、あなた方も、さきほど申し上げたように、強信な信心における体験をしっかりと世の中に知らせて、そうして、一日も広宣流布の早からんことを望んで、私の講演を終わります。

 

昭和31年11月1日

創価学会第十五回総会

後楽園スタジアム