青年諸君に告ぐ
青年諸君よ!
日本の国を救わんとして、政治、経済、教育、文化というものが、各部門ごとに活動しているが、政治のみで、経済のみで、教育のみで日本を救えるものではない。吾人は、けっして政治、経済、教育、文化の活動を否定するものではなく、それら各種のものの根底に、真の仏教がなくてはならぬと断ずる。
政治にせよ、経済にせよ、教育にせよ、その根本に真の仏教をおいて、その活動を培養し、助長して、国家を救い、民衆を幸福のなかに暮らさせんとするものである。
しからば、真の宗教とはなにか。それは、いうまでもなく日蓮大聖人様の教えを、そのままに実践している日蓮正宗である。このことは、大聖人様の御書により、はたまた仏教哲学の原理よりして、それに加うるに幾多の実証において明らかなことである。
さて、現在の日本の宗教をみるに、幾多の宗教がある。あるものは営業的であり、あるものは伝統の惰性に生き、あるものはこけおどしの祈禱を行なう等、どれひとつとして個人を幸福にし、安定させ、強き生命力を与えるものはない。
しかして、かれらの布教にあたっては、自己の宗教に確信なきがゆえに、たがいに他の宗教を是認し合い、妥協している。
もし念仏宗が、真言宗を認めるならば、念仏を広める必要はない、真言宗にまかせておけばよい。正しい宗教、最高の哲学というものは、ひとつしかないはずです。他宗で民衆が幸福になると考えるならば、自己の宗教を否定することも起こるではないか。どれもこれもが民衆を幸福にするとするならば、宗教に差別がいらないはずである。
差別の世界におりながら、その差別をつきつめてみようとしないのは、ひきょうものの宗教、あるいは怠惰な宗教といわなければならない。ゆえに、『かれらは妥協の上に自己の宗教の繁栄をはからんとするものである』と断ずるのである。
しかるに、わが日蓮正宗は、そうあってはならぬと、日蓮大聖人様の命を奉ずるものである。そのなかでも、われら学会員は、ぜったいに、忠実に、日蓮大聖人様の命令を遵守するものである。
ゆえに、七百二年前、日蓮大聖人様が、念仏無間、禅天魔、真言亡国、律国賊とおおせられて、当時の宗教を否定し、邪宗邪義を打ったごとく、われわれも、いっさいの邪宗邪義を打って、妙法一途の日本となし、天下泰平の御代を建設せんとするものである。それはなにゆえか。
妙法蓮華経でなければ、末法の衆生は救えないからである。
そこでいまわれわれは広宣流布するにあたって、ひとりとして味方はない。あらゆる宗教を敵として、邪宗邪義を撲滅しなければならぬことはいうまでもない。
諸君!
われらの前途が多難であることは火を見るよりも明らかである。されば諸君は、御本尊様を信仰し、学会精神を愛し、しかして若き青年の力を養えよ。
吾人は、前途多難に対して奮起を望むものである。
昭和29年10月31日
青年部一万名総登山
総本山大石寺