語訳(妙法蓮華経如来寿量品第十六)……見開きページ(666-667㌻)

 

い南無妙法蓮華経と唱え奉る者是なり云云」

【衆生を度せんが為の故に方便して涅槃を現ず】一切の衆生を救わんがために、方便のために涅槃の姿をあらわすのである。

 御義口伝(七五六㌻)にいわく、

「第十二為度衆生故方便現涅槃の事

御義口伝に云く涅槃経は法華経より出でたりと云う経文なり、既に方便と説かれたり云云」

 

【常に此に住して法を説く】大御本尊は常に娑婆世界におられて、南無妙法蓮華経を説いておられる。

 御義口伝(七五六㌻)にいわく、

「第十三常住此説法の事

御義口伝に云く常住とは法華経の行者の住処なり、此とは娑婆世界なり山谷曠野を指して此とは説き給う、説法とは一切衆生の語言の音声が本有の自受用智の説法なり、末法に入って説法とは南無妙法蓮華経なり今日蓮等の類いの説法是なり」

 

【広く舎利を供養し】大御本尊を讃嘆することである。舎利には二つの見方がある。すなわち、①法身の舎利②生身の舎利である。

 生身の舎利とは、人間界に出現された仏の遺骨をいう。富士大石寺にある釈尊の骨の一部等がそうである。

 法身の舎利とは、仏が説いた経巻や教えをいう。

 法身の舎利、生身の舎利には、それぞれ、全身の舎利と砕身の舎利がある。

 

 文底の仏法では、舎利とは法身の舎利、全身の舎利であり、御本尊と心うベきである。

 

【一心に仏を見たてまつらんと欲して、自ら身命を惜まず、時に我及び衆僧、倶に霊鷲山に出ず】これは三大秘法の依文である。すなわち図示すれば、次のようになる。

 

 一心欲見仏、不自惜身命………本門の題目

 時我及衆僧、倶出………………本門の本尊

 霊鷲山……………………………本門の戒壇

 

 御義口伝(七五六㌻)にいわく、

「第十四時我及衆僧倶出霊鷲山の事

御義口伝に云く霊山一会儼然未散の文なり、時とは感応末法の時なり我とは釈尊・及とは菩薩・聖衆を衆僧と説かれたり倶とは十界なり霊鷲山とは寂光土なり、時に我も及も衆僧も倶に霊鷲山に出ずるなり秘す可し秘す可し、本門事の一念三千の明文なり御本尊は此の文を顕し出だし給うなり、されば倶とは不変真如の理なり出とは随縁真如の智なり倶とは一念なり出とは三千なり云云。

 又云く時とは本時娑婆世界の時なり下は十界宛然の曼陀羅を顕す文なり、其の故は時とは末法第五時の時なり、我とは釈尊・及は菩薩・衆僧は二乗・倶とは六道なり・出とは霊山浄土に列出するなり霊山とは御本尊並びに日蓮等の類い南無妙法蓮華経と唱え奉る者の住所を説くなり云云」

 

【霊鷲山】梵語では耆闍崛山という。

 ①インドのベンガル州にある山で、三千年前釈尊が法華経を説いた時の場所である。その南に尸陀林があって死人捨て場となっているため、鷲が飛来するので、鷲山といい、三世の諸仏の心法たる法華経がとどまるので、霊山という。

 ②日蓮大聖人の仏法からみると、本門の大御本尊を信じて題目を唱える者の住所はいかなる所でも霊鷲山である。別して申せば、人法一箇の本門戒壇の大御本尊の住所こそ霊鷲山であり、具体的には娑婆世界、その中には日本国、日本国の中には富士大石寺が霊鷲山である。天台は「霊山の一会儼然として未だ散らず」といっているのも、この意である。

 

【衆生劫尽きて大火に焼かるると見る時も……憂怖諸の苦悩是の如き悉く充満せりと見る】一念三千の依文である。

すなわち図示すれば、次のようになる。

 

 三世間

  我此土安穏……国土世間

  衆生所遊楽……衆生世間

  宝樹多華果……汽陰世間

 十界

  散仏及大衆……仏、菩薩(及)

  園林諸堂閣……縁覚

  雨曼陀羅華……声聞

  天人常充満……天、人

  憂怖諸苦悩・如是悉充満……修羅、餓鬼

  諸天撃天鼓……畜生

  大火所焼時……地獄

 

 御義口伝(七五七㌻)にいわく、

「第十五衆生見劫尽○而衆見焼尽の事。

御義口伝に云く本門寿量の一念三千を頌する文なり、大火所焼時とは実義には煩悩の大火なり、我此土安穏とは国土世間なり、衆生所遊楽とは衆生世間なり、宝樹多華果とは五陰世間なり是れ即ち一念三千を分明に説かれたり、又云く上の件の文は十界なり大火とは地獄界なり天鼓とは畜生なり人と天とは人天の二界なり、天と人と常に充満するなり、雨曼陀羅華とは声聞界なり園林とは縁覚界なり菩薩界とは及の一字なり仏界とは散仏なり修羅と餓鬼界とは憂怖諸苦悩如是悉充満の句に摂するなり、此等を是諸罪衆生と説かれたり、然りと雖も此の寿量品の説顕われては、則皆見我身とて一念三千なり、今日蓮等の類い南無妙法蓮華経と唱え奉る者是なり云云」

 

【大火に焼かるる】煩悩の大火に焼かるることである。

 

【伎楽】音楽のこと。

 

【曼陀羅華】曼陀羅は梵語である。訳せば、天妙、悦意、円、