貧乏について

 

【問】 信心をして、一番救いがたいのは貧乏であると聞きましたが、その理由を教えて下さい。

 

【答】 貧乏というのは、すぐなおらないのです。時間がかかるということだけなのです。信仰してすぐ金がで

きてしまったら、だれでも信心します。時間がかかるあいだ、待てというだけなのです。

 

 早くいえば、下種というでしょう。種を植えて、植えたらすぐに稲でもなんでも次の日すぐできたら、これは

おかしなものではないですか。そういうことは世の中にないでしょう。柿の木は八年、ももは三年、りんごの木

も八年です。米だって半年かかります。野菜だって三か月ぐらいかかるのです。そういうものではありませんか。

種を植えたのです。種を植えたのに次の日、すぐから金持ちになるなどとはぜいたくです。そのようなことは、

ありえません。ただ病気は本人が苦しむでしょう、だから本人を苦しめないために、なおりが早いのです。金欠

病は、これは時間がかかります。種を植えたのだから、八年も待ったらだいじょうぶです。

 

 よく私は、「あなたは信心して、なん年になる」と聞くのです。三年とか二年とかいいます。それで「まだ病気

で困っている」と聞くと、私はそんなバカなことあるかという、それは信心していないと私はいうのです。断じ

てそんなことはありません。そんなバカなことあるものですか。病気などというものは、かんたんになおるので

す。ただ金欠病というのは、前世から背負ってきたものだから、これは時間がかかるのです。

 

 あるおばあさんが、いつも話すことだけれども、「先生、なん年くらいやったらだいじょうぶですか」「七年や

りなさい」「そんなに待っていられません」それは、その気持ちはよくわかります。その気持ちはよくわかりま

すけれども、これは待ってもらわなければなりません。木が育たなくてはなりません。育ったらもうだいじょう

ぶです。もうお金などは降るようにはいってきます。ほんとうに気の毒な人には金をやりたいと思うけれども、

ぼくなんかは、金をやった人で成功した人はありません。やはり自分で育てなくてはならないのです。

 よくこういう手紙がくる。今月の末に三十万円なければ破産するから、先生貸して下さい。そんなの返事なん

か出すなという。そんなものに二十万や三十万の金をやっても成功しません。三十万なり二十万は損するに決ま

った運命を持っているのです。ですから、自分で打開していく以外にないでしょう。そうではないでしょうか。

それならやってもしょうがありません。

 

 ある男が蒲田支部におりました。夜逃げしたのです。それまで、いつも私のところへきていたのです。いろい

ろなことをいって聞きにきていました。ところがいつの間にかいなくなってしまいました。あいつどうしたと聞

いたら、四年くらい前の話です。「先生、もう電話をひいて、新しい家を建ててやっている」というのです。じ

ょうだんではないよといったのです、夜逃げした人が、そういうものです。そういう人はたくさんいます。です

から、それは信心をまっとうしていきなさい。金ができないということがあるものですか。そんなもの、世の中

に六千何百億という金が、ごうごうと流れているのです。ちょっとここに千円札のはいるあなさえあれば、すー

っとはいってくるのです。そのあなをあけるのに時間がかかるのです。だから金はかならずできます。まじめな

信心をきちんとしていなさい。金はかならずできます。できないわけがあるものですか。

 

 そうはいっても、小判がほしいといってもそれは無理です。ないのですからお札だもの、紙で印刷したものだ

もの、それに流れているのだもの、はいってこないわけがありません。それがはいってこないなら、大御本尊様

に文句をいいなさい。七年間もまじめに信心して、戸田は七年といったと、まだはいってこないと、けしからん

と、あんたうそつきかと御本尊様に談判しなさい。次の日からはいってくるから、それはうそではありません。

 

 私などは貧乏のし通しだったのだから、質屋ののきをくぐったのは、なんべんかわからないのです。私は金時

計を昔もっていました、それを質屋へ持っていくと、いつも裏をあけて、そしてほんとうの金かどうか番頭が削

ってみるのです。筋がなん本もついてしまったのです。恥ずかしくて人の前に出せないのです。とうとう戦争で

供出ということになって、それで皮だけは質屋へやりました。その時、とてもうれしかったのです。みな金時計

を持っていないのだから、持っていなくてもいいのだから。

 

 それほどの貧乏をしてきて、いまそう金には困らないのです。たくさんは持っていないけれども、二百円や三

百円は持っています。だが、二百円、三百円で困らなくなればこれで金持ちです。どうです、何万円なくてもぼ

くはいいのだもの。二百円あればだいじょうぶなのです。あとは困らないのです。こうなれば金持ちのうちでし

ょう。うそだと思ったら、いっぺん千円札一枚見せてやろうか、千円か二千円持っていたらぼくは大金持ちでい

るつもりなのです。だって使わないもの、金なんか、だから金持ちです。ほんとうです。あなたがたも早くそう

いうふうになりなさい。