戸田城聖全集質問会編 155 貧乏について

 

〔質問〕 信心をして、いちばん救いがたいのは貧乏であると聞きましたが、その理由を教えてください。

 

 貧乏というのは、すぐなおらないのです。時間がかかるということだけなのです。信仰してすぐ金ができてしまったら、だれでも信心します。時間がかかるあいだ、待てというだけなのです。

 早くいえば、下種というでしょう。種を植えて、植えたらすぐに稲でもなんでも次の日すぐできたら、これはおかしなものではないですか。そういうことは世の中にないでしょう。柿の木は八年、桃は三年、リンゴの木も八年です。米だって半年かかります。野菜だって三か月ぐらいかかるのです。そういうものではありませんか。

 種を植えたのです。種を植えたのに次の日、すぐに金持ちになるなどとはぜいたくです。そのようなことは、ありえません。ただ病気は本人が苦しむでしょう。だから本人を苦しめないために、なおりが早いのです。金欠病は、これは時間がかかります。種を植えたのだから、八年も待ったらだいじょうぶです。

 よく私は「あなたは信心して、何年になる」と聞くのです。三年とか二年とかいいます。それで「まだ病気で困っている」と聞くと、私はそんなばかなことあるかという、それは信心していないと私はいうのです。断じてそんなことはありません。そんなばかなことあるものですか。病気などというものは、かんたんになおるのです。ただ金欠病というのは、前世から背負ってきたものだから、これは時間がかかるのです。

 あるおばあさんが、いつも話すことだけれども「先生、何年くらいやったらだいじょうぶですか」「七年やりなさい」「そんなに待っていられません」、それは、その気持ちはよくわかります。その気持ちはよくわかりますけれども、これは待ってもらわなければなりません。木が育たなくてはなりません。育ったらもうだいじょうぶです。もうお金などは降るようにはいってきます。ほんとうに気の毒な人には金をやりたいと思うけれども、ぼくなんかは、金をやった人で成功した人はありません。やはり自分で育てなくてはならないのです。

 よくこういう手紙がくる。今月の末に三十万円なければ破産するから、先生貸してください。そんなの返事なんかだすなという。そんなものに二十万や三十万の金をやっても成功しません。三十万なり二十万は損するに決まった運命をもっているのです。ですから、自分で打開していく以外にないでしょう。そうではないでしょうか。それならやってもしようがありません。

 ある男が蒲田支部におりました。夜逃げしたのです。それまで、いつも私のところへきていたのです。いろいろなことをいって聞きにきていました。ところが、いつのまにかいなくなってしまいました。あいつどうしたと聞いたら、四年くらい前の話です。「先生、もう電話をひいて、新しい家を建ててやっている」というのです。じょうだんではないよといったのです、夜逃げした人が。そういうものです。そういう人はたくさんいます。

 ですから、それは信心をまっとうしていきなさい。金ができないということがあるものですか。そんなもの、世の中に六千何百億という金が、ごうごうと流れているのです。ちょっとここに千円札のはいる穴さえあれば、すーっとはいってくるのです。その穴をあけるのに時間がかかるのです。だから金はかならずできます。まじめな信心をきちんとしていなさい。金はかならずできます。できないわけがあるものですか。

 そうはいっても、小判がほしいといってもそれは無理です。ないのですから。お札だもの、紙で印刷したものだもの、それに流れているのだもの、はいってこないわけがありません。それがはいってこないなら、大御本尊様に文句をいいなさい。七年間もまじめに信心して、戸田は七年といったと、まだはいってこないと、けしからんと、あんたうそつきかと、御本尊様に談判しなさい。次の日からはいってくるから。それはうそではありません。

 私などは貧乏のしどおしだったのだから、質屋の軒をくぐったのは、何べんかわからないのです。私は金時計をむかしもっていました。それを質屋へ持っていくと、いつも裏をあけて、そしてほんとうの金かどうか、番頭が削ってみるのです。筋が何本もついてしまったのです。恥ずかしくて人の前にだせないのです。とうとう戦争で供出ということになって、それで皮だけは質屋へやりました。そのとき、とてもうれしかったのです。みな金時計を持っていないのだから、持っていなくてもいいのだから。

 それほどの貧乏をしてきて、いまそう金には困らないのです。たくさんは持っていないけれども、二百円や三百円は持っています。だが、二百円、三百円で困らなくなれば、これで金持ちです。どうです、何万円なくてもぼくはいいのだもの。二百円あればだいじょうぶなのです。あとは困らないのです。こうなれば金持ちのうちでしょう。うそだと思ったら、いっぺん千円札一枚みせてやろうか。千円か二千円持っていたら、ぼくは大金持ちでいるつもりなのです。だって使わないもの、金なんか。だから金持ちです。ほんとうです。あなた方も早くそういうふうになりなさい。