戸田城聖全集質問会編 140 善人とは

 

〔質問〕 五濁悪世というが、善人はどこにいるのでしょうか。

 

 南無妙法蓮華経を信ずる者を善人という。この質問はひじょうにおもしろい。金があり気持ちよく、腹をたてぬ、これは善人のようであります。金がない、女房にいじめられる、腹をたてる、これは悪人のようにみえます。自分が悪人か善人かわかりますか。夫婦げんかしたとき、十年、二十年仲良くしてきても、敵味方となりすごくなります。そのとき、女房にたいして、自分が善人か親切かどうかわかりますか。いや私はそう思うといっても、そんなことはだめです。善人悪人はそのときのはずみでできるのです。これを機根の機といいます。人間のなかで、だれが善人かときめようとすると、善人はいない。そのとき、よいことをしたということで決めるわけです。これを一念三千の法門といいます。

 こういう人間だから、そういう悪いことをさせないがために、御本尊を与え、仏という善人にしてしまおうというのが、日蓮大聖人様のおこころであります。善人になるときも、悪人になるときもあります。ほんとうに御本尊を信じきったとき、その人が善人であります。