第四節 五重三段・四重興廃・三重秘傳等
釈迦一代五十年の経教と文底下種の三大秘法とは、五重相対によりて明らかであるが、五重三段・四重興廃・三重秘伝等も同じく宗教批判の原理である。
一、五重三段
観心本尊抄(御書二四八頁)に説き明されている。序分・正宗分・流通分の三段を五重に立てわけられて一切の教法を批判し、文底下種本門こそ末法の正意なりと立てられた法門である。
(一)、一代一経三段
序 分……華厳・阿含・方等・般若
正宗分……無量義経・法華経・普賢経の十巻
流通分……涅槃経等
(二)、法華一経(十巻)三段
序分……無量義経・序品
正宗分……方便品より分別功徳品の半まで十五品半
流通分……分別功徳品の半より普賢経まで十一品半と一巻
(三)、迹門熟益三段
序分……無量義経と序品
正宗分……方便品より人記品まで八品
流通分……法師品より安楽行品まで五品
(四)、本門脱益三段
序分……涌出品の半品
正宗分……寿量品と前後の二半、一品二半
流通分……その余
(五)、文底下種三段
序分……十方三世諸仏の微塵の経経の体外の辺
正宗分……交底下種の南無妙法蓮華経
流通分……十方三世諸仏の微塵の経経の体内の辺
二、四重興廃
四重の興廃とは、
(一)、爾前の大教興れば、外道廃る
(二)、迹門の大教興れば、爾前廃る
(三)、本門の大教興れば、迹門廃る
(四)、観心の大教興れば、本門廃る
以上四重の興廃であるが、観心とは天台の教観相対を意味する場合もあり、ただちに文底下種法門とはいえない。しかし日蓮大聖人が引用される場合には五重相対と同趣旨であって、観心とは文底下種三大秘法の南無妙法蓮華経である。
三、三重秘伝
開目抄(御書一八九頁)
「一念三千の法門は但法華経の本門寿量品の文の底にしづめたり、竜樹天親知ってしかもいまだひろいいださず、但我が天台智者のみこれをいだけり。」
右の御文において日寛上人は三重の秘伝と拝すベきことを御示しになり、
一念三千の法門は
但法華経…………権実相対、第一法門
但本門寿量品……本迹相対、第二法門
但文の底…………種脱相対、第三法門
等と仰せあそばされている。これが三重秘伝である。