feat 2012/xx/xx 20:43:03
一昨年末、麺屋中川時代に髙梨(兄)店主が生みだした超名作鶏塩そばが、別暖簾だんすとして店主髙梨(弟)様により提供開始。
う~ん、感慨深いです。
店名、いいですね~。
実は私、髙梨(兄)店主が麺屋中川時代に開いていた別暖簾「無題」において、最後の無題提供の日を氏のラストダンスと何度も呟き、レビューしていたのでした。
氏の作品は、ただ食べるものを提供する以上に、もっと伝えたいものや感じさせたいものが内包されているものばかりだったので、そんな類稀なる表現力への敬意を表してラストラーメンではなくラストダンスと呼んだんですね。
だから「だんす」って名前になったのは、結構私的には嬉しかったりして・・・、という個人の事情はともかくとしてですよ。
このだんす暖簾の鶏塩そばがやっぱり美味い!!
中川時代の鶏塩そばに比べると、演出のための特殊効果を抑えて役者のポテンシャルにより歩み寄ったかのような作風に思えるのは、やはり超人気店としてお店が軌道に乗った余裕なのかも。
中川時代の鶏塩そばに素人の私が勝手に感じてた、ラーメン作りの巧さと技を認めさせようとする料理人の情熱的な色彩(←こういうのもまた大好物だけどねw)が少し抑えられ、逆に熱くなっているお客さんに対して冷静に完成度高いレシピを引いて本質を磨きこんできた感じを受けます。
もちろん冷静に完成された作品と言っても、実際にお客さんを前にその作品を作るのは情熱的アーティストな弟さんなわけですから、食べる側としては精密機械の様な作り込みと同時に、人間味あふれる熱いライブ感を楽しめるのですから、言うことなし。
で、この弟さんというのがやっぱり凄い。
常々、料理人は努力よりも才能だと思うよと言い続ける私としては、これを見るとやっぱり大事なのは経験よりも才能だったんだな~と唸るしかないところ。
ラーメン職人歴の短い弟さんですが、店主としての立ち振る舞い、調理の全てが素晴らし過ぎ!!
正直言って、他のラーメン屋さんがその様子を見るのは怖いと思いますよ。
短期間でここまでできるものか・・・っていうより、何年もやられているラーメン職人さんの多くよりも堂に入っているじゃないですか。
スープを椀に注いで、麺を湯切りし、麺を椀に入れる。トッピングをこなし、蓮華を添えて客に提供する・・・
早い!
慌てているわけでもないのに、無駄がないから実に早い!!
しかも要所では慎重に丁寧に作業をこなし、随所でさりげなく確認作業・・・、さらっとやっているようでありつつも安定感に満ち満ちています。
何より目の前のラーメンにしっかり向き合って集中して作ってくれているのが伝わるし、それがお客としてはなんだか嬉しい。
で、一番驚いたのは他のスタッフさんへの指示が簡潔で的確で先読みがきっちり効いていること。
それがお客さんにも伝わるレベルでしっかりしていて、こんなのベテランでもなかなかできないことでしょ?って思う。
意外にも私、店員さんの立ち振る舞いや接客に興味を持ったり、それをレビューするタイプでもないのですが、今回ばかりは予想をはるかに超えてきびきびと無駄なく立ち振舞われている様子に驚き、感心してしまい、自然と意識が寄せられちゃった次第。
やっぱりフロントマンとしてライブを数多くこなされている店主さんだからなんでしょうかね?
迷いを感じさせない堂々とした様子や、場を引っ張り切るオーラが凄いんです。
しかもそれでいてお客さんには柔らかい笑顔で肩の力を張らせない接客をみせるんだから流石です。
緊張感を感じさせずに、安定感と適度な集中力に満たされています。
確かお兄様が弟様のことを、ブログか何かで未来の巨匠と呼んでいたことがあった気がしますが、確かにわかる気がします。
次世代の大物・・・NEXT BIG THINGの風格を感じます。
ちなみに素人目には湯切りの感じが師匠であるはずのお兄さんとは若干違うタッチなのが、あれっと思ったものの、ひょっとして細麺故の配慮があるのかも。
考えてみると、麺を引きずらずに傷つけないようにしつつ、最小の動きで正確に湯切りされている感じ。
つけ麺の麺だと、どうなるんでしょうか?
湯切りなんて手癖の部分もあるとは思うんで、きっと一緒だろうとは思いつつも、ちょっと見てみたいかも。
・・・と、マジでガチでお世辞ゼロで、ここまでやれるかどころか、すっかり完成されちゃっている弟店主様の立ち振る舞い。
これ、営業2日目のだんすの話です。
店主歴2日目の実力ですよ、これが!!
新しくお店を任された人のスタートを応援するための褒め言葉だとか、ましてや励まそうだとか、お世辞を言おうとか、そんなつもりサラサラ無いですし、そんなこと考える程上からモノを身ちゃいません。
経験豊富なお兄様程には流麗な作業にならない分だけ、逆にきびきびと感じられることが得しているのかもとは思いつつも、本当に本当に素晴らしかったんだってば。
というわけで、結局経験や努力では才能に追い付けないと確信したのでした。
・・・で、こんな話を書くとは予想もしていなかったけど、ラーメンが出てくる前からすっかり衝撃受けちゃったんで思わず余計なことを書いてしまいました。
で、んなこたーどーでもよく、やっぱり味だよね、味!!!
皆さん程に味が分かるわけではないけれど、ラーメンブログを趣味とする人間の楽しみにちょいとお付き合いくださいませ。
さあ、味のレビューだぁ!!!!
まずはスープ。
口当たりにオイルが立ち、じわり美味い。
そこそこ評価の高い淡麗系のお店の鶏系の作品でも割と感じられやすい毛羽立った香ばしさや肉臭さはありませんし、狙ってもいない。
表面的なインパクトを作らない分だけ、より深いところの旨味に意識が運び込まれるのが嬉しい。
オイルは鶏の甘旨い味わいをすっと内包し、味わいの立ち上がりで独立感を覚えさせつつも、スープとの境界を立てすぎずにしなやかにスープの旨味を引き出します。
中盤はスープの持つ鶏の旨味が全開。
オイルの反動で一瞬酸味を感じさせつつもそれが引き金となって鶏の豊満かつ弾力感のある旨味がより躍動的に舌を捉えます。
中央にどんっと鶏の旨味を残し、しっかり肉厚なコクを覚えます。
その旨味は肉弾的でありつつも、その味わいの輪郭では、ふわっと鮮やかな色彩の風味が花開き広がるように感じられ、これは何?
鶏の華やかな個性、良質の性格がバラエティーの豊富さが、ブーケを描いているんでしょうか?
鶏の芳醇な味わいを主軸としつつ、その味わいが押しつけがましくないのがいいですね。
舌に染みいる味わいというよりは、心を弾ませる旨味のボリューム感が、圧倒的。
淡麗系らしい繊細な作り込みの上で成り立っていることを感じさせつつも、この味わいの厚みは淡麗系にあらず。
もし私の一昨年前の舌の記憶が正しいとするならば、中川時代の鶏塩そばがいくらか塩気で鶏の魅力を引き出した感じを残すのに対し、このだんすバージョンでは、鶏からの旨味の抽出が贅沢で丁寧だったが故に濁りなく前に出る味わいに仕上がったという印象を受けます。
鶏の油脂感もさらにリッチになっているように思えますね。
軸に重心がかかっているその説得力ある風合いは、めんりすとさんや毎度!さん、わさらびさんなどのタッチというよりは、五轍さん(をオイルをもっと優しくして、その分スープの鶏感を前に出した感じ?)などに覚える印象に近いかもしれません。
そして後味。
後味がめっちゃ美味い!!!
一昨年前の感動がよみがえります。
鶏の美味しさを舌に転がしながらの後味では、小さく、しかし粒立ちのしっかりした塩気が塩そのものの旨味を転がします。
塩気をフィニッシュに残すラーメンの多くは、しょっぱいだけのチープな作品だったりするものですが、この作品はクオリティーが数段違うというよりは、違う世界。
塩気の演出が徹底してエレガントですね。
口当たりの塩気は一昨年前バージョンよりもややライトにアレンジされたように感じられましたが、後味の塩気はまた一段と磨き上がって美味い!!
これぞ「鶏塩」のネーミングに相応しいラーメンですよ。
「鶏塩」というカテゴリーにおいて、最高に美味しいラーメンがこれだと断言しちゃいます。
うっすらとした記憶では、一昨年の作品にはもう少し酸味が加えられていたような気がします。
今回の鶏塩そばはそういった調味料的?なキレを感じず、素材感がより前に出ているように思えます。
進化していますよね~・・・。
麺は細麺ストレート。
スープの芳醇さからすると、ちょっと華奢かと思ったのは一口目。
でも食べるたびに魅力がぐいぐい増してきました。
軽い伸縮からプリッと弾ける歯切れの心地よさを覚えさせるその麺は、鶏スープの味を絡めるたびに鶏の肉感を麺の穀物感の中に覚えさせ、旨味によって食べごたえを残す麺ですね。
麺そのものの美味さよりも、スープと麺のバランスによる魅力がより際立つ印象で、何より食べ進めれば食べ進める程に麺の良さを記憶し、美味しさが積み上がっていくように感じられる麺というのは素晴らしい限り。
食べる程に飽きる麺、早く食べないと不味くなる麺も多い中、食べるたびに新しい美味しさが引き出されるように感じられるのは最高ですよ。
スープもまた飲み進める程に、オイルの個性が弱くなるためか鶏そのものの甘旨さ強調されて行きます。
そのことがまた、麺とスープの調和をより深めていくことにも繋がっていますよね。
トッピングも豊富です。
チャーシューはろたすさんらしく、噛むとじわわーんと味わい広がる奴。
メンマは味わいしっかりしていて、鶏の性格に対してはいくらか独立的に存在。
鶏団子(?)はネギの味わいがやや大人びた湿り気ある味わいである分だけ、鶏スープの華やかな性格とはやや異なる印象。これを上手にスープに絡めて、自分好みの味わいに仕立てると面白いのかな?
鶏スープに味わいのバラエティーを添えようとするアイテムが多いですね。
私としては、中でも特に秀逸なトッピングとしてネギ、さらには紫玉ねぎ(?)を支持。
紫玉ねぎがスープに添える辛味が実にエレガントで、スープのキメの滑らかさはいくらか削るとはしても、随所に鶏と玉ねぎが目の覚めるようなマリアージュを起こし、これは痺れるね!!
ラーメンという比較的B級にカテゴライズされる料理に、リッチな欧風スープが持つ高貴なる魅力がふわっと香る、まさに酔える瞬間がここ!!
うまいいぃぃぃっ!!!!
ラーメンの作り方も知らない素人の私が、プロフェッショナルの味を長々とレビューしても何ら意味がないとは思いますが、うっかり読んでくださった皆様、有難うございます。
まだ未体験という方は絶対に味わっておくべき一杯が木曜限定で用意されています。
食べてすぐにレビュー書き終えましたが、アップするのはお盆明けかな??
どうせお盆はラヲタで混みまくりでしょうからね。
このブログを読んで下さる女性一人客系の方々に早々と紹介しても、きっと8月16日(木)あたりは訪問しにくいでしょう。
翌木曜日ころにUPしたら、ごく少数の食べてから読みたい、読んでからまた食べる系の親愛なる読者の皆様がたもご満足いただけますでしょうか?
誰もが一度しか体験できない「未来の名店だんす初体験」です。
後ろの行列にプレッシャーを感じるお盆休みに食べるより、いつもよりもう少し心をラーメンに落とし込んで味わいたいんです。
さあ、どうですか?
皆さんの「だんすはすんだ」かい?
ウマイ度 ★★★★★
スゴイ度 ★★★★★
本当は弟店主様の経験値に多少不安を覚えながらの訪問でしたが、あまりに完璧で驚きました度 ★★★★★