オグララ・ラコタ滞在記1 第二十章 ホワイト・サンダーからのギフト1部

サウスダコタ～パインリッヂ居留区オグララ・スーの聖地で過ごした魂の旅日記　PART 1
第二十章　ホワイト・サンダーからのギフト　1部

オグララ・ラコタ大学の図書館を出ると、そこで教授をしている人が声をかけてきた。ラコタ族の人で、とてもアカデミックな雰囲気の女性だった。彼女はラコタの人文学者らしく、系図をひも解いているのだという。

手に持った書籍をぱらぱらと私達に見せながらいろいろ言っていたが、早口なのであまりわからなかった。だが、そこにはレッド・クラウドなどの写真が見られたので、チーフ（族長）に関する文献なのではなかろうかと思われる。ここで講義を行っていることを誇りに思っているのだろう、一生懸命説明をしてくれていた。

「ここは環境もいいし、おすすめよ」と留学を薦めるような感じのことを言っていたが、そりゃぁ条件がそろえば少しの間でも通いたいとは思う。この歳で大学というのもなんだが、悪くないだろう。

ちなみに、ホワイト・サンダーの事を聞くと、本当に知っている感じの答えが返ってきた。ここはカイル地区。彼はここの精神的指導者だから有名人なわけだ。

結局、1時間程大学で過ごし、ホワイト・サンダーの家に向かった。ここから車でちょっと行ったところに彼の家がある。

まず、車が彼の敷地内に入ったとたん、ジャックが走ってきた。本当に人なつっこい犬だ。車が止まるとすぐさま寄ってきて飛び跳ねて甘えてきた。特にジャックは高木さんが大好きらしく、足に絡み付いてなかなか離れず、もっと遊んでくれとじゃれまくる。

「ジャック！だめだぞ！」

家の窓からホワイト・サンダーの声がすると、ジャックはシュンとしょげて大人しくなってしまう。犬は賢い。

家の中に入ると、こんどは二匹の猫がお出迎えだ。喉を鳴らして擦り寄ってくる。抱き上げても怖がらない甘えん坊の猫達とも今日でお別れかと思うとちょっと寂しい。

Tomoさんに促されて家の中に入ると、コーヒーが用意されていた。

ランチをいただいた時のテーブルではなく、ソファに案内された。ソファの向かいにホワイト・サンダーが座り、静かに話しはじめた。それは、彼と馬で散歩している時に話した事に関連したようなものだ。

「・・・で、この旅で何か得るものはあったのか？」

「短い間にたくさんの事があった。予定なんて無いような旅でありながら、多くの出来事があってとても良い旅だった」

一言表現できるほど簡単な旅ではなかった。

「次来ることがあって、もし必要ならばヴィジョンクエストもするかもしれない」

と言ったら、「ヴィジョンクエストには相当な体力とそのための準備が必要だ。簡単にできるものじゃないし、するものでもない。それにあなたはまだ若い女性だ」と返ってきた。

もちろん分かっている。だが・・・実のところこの旅で答えがでたようなもので、この時点では「それでもなおかつ必要があれば」という意味だった。だから彼がそう簡単にできるものじゃないと言うように、こちらもそれなりの準備をして挑みたいと思った。もちろん、本当に必要があってやるのならの話だ。

ここで、グレイ・グラスから聞いた話の裏付けをとるかのように、サンダンスやスウェットロッジなどの話を聞いた。そのことは先のこれに関するテーマに書いたので割愛するが、やはりホワイト・サンダーは厳しい。そして、続いてこんな話になった。

「人間が生きていく上で必要な事が四つある。『犠牲（思いやり）の心』『敬い（感謝）の心』そして『勇気』と『知恵』だ。今のアメリカ・・・白人はこの四つの順番が反対で、しかも、もはや知恵と勇気しか発展させようとしていない。そんなことではない。ラ

コタは第一に犠牲の心を重んじる。近しい者を大切にして、彼等のために祈る。次が敬いの心だ。我々を生かしてくれるグレートスピリットと母なる大地への感謝と、それに育まれた者たちへの敬いの心だ。そして勇気。時に守るべき者のために身を犠牲にすることを厭わない勇気だ。そして最後が知恵だ。知恵は自ずとあとから着いてくる。俺はこの四つの言葉とその順番を大切に思っているし、あなたもそうであってほしいと思う」

彼がようやく最後の最後になって語ったその後の長い話は、この旅の中で一番印象深く、そしてこの人物・・・ホワイト・サンダーならびにラコタ族の伝統を背負って生きる人々の語ることは常に深い精神性が感じられた。

＊サウスダコタ～パインリッヂ居留区オグララ・スーの聖地で過ごした魂の旅日記　PART 1は2006年に別のブログに掲載していたものをアメーバ移行に伴い、再編集しておとどけしています。

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