(愛)

その感情を私が胸に感じたその時、グアンッと大きく地面が揺れるのを感じた。

 

「うあああああああ!!!!」

 隣に立っていたアルトが悲鳴を上げた。

 壇下のトルータン達も。

 いきなり波動を上げてしまったからトルータン達はこの場に存在するのが辛いんだわ。

 私はほんの少し「愛」を緩めた。

 

「セリ!!」

「!ティグル!!」

 それでもこの帝国に隙を作るには十分だった。

 目の前に現れたのはティグル。私がワープするまでもない。ティグルはずっとこの時を待っていてくれたのね。

 ティグルが私に手を差し伸べた。そう、今の内に地上に行かなければ。

「一緒に!!」

 私はアルトの手を掴んだ。

「何をする!!」

 アルトはまだ辛そうにもがいた。

「あなたも来るのよ!!」

「セリ!行くぞ」

 ティグルが言った。

 

 あっという間に私達は地上に移動していた。

「ここは……」

 アルトが不思議そうに辺りを見回した。

「セリ!君が地下帝国の波動を変えてくれたんだね。おかげでワープする事ができた。けれど何故トルータンを……」

 ティグルはアルトを見て戸惑っている様子だった。

「それどころじゃないの!ティグル!!」

 スーツケース核爆弾の事を伝えないと。

「なんだって!!」

 私の思考を読みティグルはすぐに目をつぶった。テレパシーを光の銀河連邦に送る為だ。

 

「ああっ!!」

 それが現れたのはその次の瞬間だった。 

 巨大な発行体が空に現れた。

 

「なんだ!あれ!!」

「UFO!?」

 あちこちから叫ぶ声が聞こえた。

 私はようやく周りの地球人達に気づいた。

 どうやら日本の公園のようだった。

 

 あの光は。

 あの波動は。

 空に浮かぶあれは。

 

 光の銀河連邦!!

 

  パアアアアアアッ

 

 閃光が走る。

 

(眩しいっ!!)

 私は目を閉じた。

 

(――)

 そして静寂。

 

 

 ゆっくりと目を開ける。

 私が立っているのはさっきと同じ公園。

 ただ光の銀河連邦の姿はもうそこになかった。

 

(すごい……)

 世界各国にあるスーツケース核爆弾21個、それが全て無害化した。

 一瞬でこんな事ができるなんて光の銀河連邦はやっぱりすごい。

 

「今、何か……」

「夢?」

 周りの人達が周りをきょろきょろしだした。

 今目の前で起きた事を認識できないんだわ。

 

「あ」

 そして私達は宇宙船にいた。

(そうか。私達の姿を地球人に見せるわけにいかないから……)

 ここならもう……。 

「もう大丈夫だよ、セリ」

 ティグルが私の体を支えた。

「ティグル……」

 私は彼に抱きついた。

「よくやってくれたよ、セリ」

 

「妃……」

 アルトが呟くように言った。

「何故」

「光の銀河連邦には私が掛け合おう。大丈夫、悪いようにはしない」

 ティグルがアルトの肩に手を置いた。

 シリウスへの居住までは許されないかも知れない。

 けれど光の銀河連邦ならそれなりの対応を取ってくれるだろう。

 

「しかし……」

「アルト」

 ありがとう。真紀と山ちゃんにした事を悔いてくれてるのね。

「あなたがやってきた事はあなたの意思じゃない」

「だが……!」

「償いが必要ならそれは光の銀河連邦が決めてくれる」

 ティグルが言った。

 

「アルト!!」

 ふっとアルトは崩れ落ちた。

ティグルが抱き留めるとアルトは意識を失っていた。

「眠っているだけだ。無理もない。産まれて初めて安心したのだろう」

「そう。そうね」

 長い道のりだったね。アルト。

 良かった。

 本当に良かった。

 

 私はそっとアルトの手を握った。