「セリ!!」

「ママ!?」

 宇宙船の中に突然ママが現れた。

シリウスから出て良いという許しが出たのね。

 良かった。もう会えないと思っていた。

 

「セリ、その衣装似合っているわよ」

 ママがにこにこしながら言った。

「あ」

 私はまだトルータンの結婚衣装を着たままだった。

「もうっ!」

 私はママを叩く真似をした。

「ふふ」

 ママが笑った。

「はは」

 ティグルも笑った。

「あははははは」

 私も笑った。

 

「セリ」

「えっ」

 急に目の前に見知らぬ人が現れた。

 シリウス人。この人は……。

「嘘!」

 私は慌てて自分の口を押えた。

この人、光の銀河連邦の一員だ!

 まさか直接会えるなんて。

「はじめまして、セリ」

 彼はシリウス流の挨拶をした。

「は、はじめまして。スウ」

 私も挨拶をした。

「光の銀河連邦は君の働きを高く評価している」

(ああ!)

 感謝の気持ちが伝わってくる。

「彼の処遇はこちらに任せてくれるね」

 スウはアルトを見た。

「はい。ありがとうございます」

 私はお礼を言った。

 

「あと3年、君が15歳になったらシリウスへの居住を許可する事になるよ」

「まあ!」

「すごいよ!セリ!」

 スウの言葉にママとティグルが私を抱きしめた。

(嬉しい!こんな素晴らしい事はないわ)

「ありがとうございます。私、なんて言ったら良いか……」

(でも)

 私が言わなくたって皆はもう私の思考を読んでくれていた。 

 それでも私はあえて言葉にした。

 

「シリウスに住んだらどんなに素敵でしょうね」

『愛』に満ち溢れた世界。美しく心地の良い波動。全てを現実化できる思考の力。地球人のフリをする事も必要ない。でも。

「でも、私にはきっと地球にいてこそできる事があると思います」

 光の銀河連邦が無害化してくれたのトルータンが関与したあの21個のスーツケース核爆弾だけ。

 地球にはまだ核兵器が存在している。

 トルータンの地下帝国だってアルトがいなくなっただけであのままだ。 

 

 シリウス人と地球人のハーフである私にしかできない事がきっとある。

 私はシリウスと地球の架け橋になりたい。

 

 ママは微笑んだ。ティグルとスウも。

「今日こそあなたを誇らしいと思った事はないわ」

 ママはもう1度私を抱きしめた。

「シリウスには遊びに来れば良い。何、地球が宇宙の兄弟になる日は近い」

 スウが言った。

「ええ、きっと」

 私は頷いた。

 

 

 ―-その夜。

 

「パパ!」

 真っ暗な家のソファで1人うなだれて座っているパパに私は抱きついた。

「瀬里!!一体どこから……!よく無事で!!」

 パパは私を抱きしめた。

「心配したよ。瀬里」

「分かってる。パパ、ごめんね」

 パパがどんなに私を心配したか。地球にいないかも知れないと思いつつも街中探してくれた事も。全部分かった。

 

「話したい事がいっぱい過ぎて、何から話して良いか分からないわ」

「ああ、地球人は思考が読めなくて『不便』だ」

パパは苦笑しながら言った。

「まあ。パパったら」

 私は笑ってもう1度パパの胸に顔をうずめた。