「どうだ?我が帝国の庭園は」

 私とアルトは外に出た。

(ここが、庭園……

 右を見ても左を見ても伸ばし放題の草ばかり。花の一つも咲いていない。

 どうだと聞かれてもお世辞にも美しいとは言い難い。

「素敵な場所ね」 

 それでも私はそう言った。

 

「ここへ来た頃の威勢の良さはどうした?そう大人しいと何か企んでいるのではないかと勘ぐってしまう」

私の前に立ちアルトは私の目をじいっと見つめた。

でも大丈夫。もう思考は読まれない。

私はただ堂々としていれば良いんだわ。

「何もないわ。無力な私には何もできないと思い知ったのよ」

 私はしれっと答えた。

 

…… 

 遠巻きにアルトと私の従者がこちらを見ている。ただの散歩だっていうのにホントどこにでもついてくるのね。もうだいぶ慣れたけど。

そんな事より。

 私は思い切って聞いてみる事にした。

「あの、もし良ければ……あなたのおばあ様に会わせていただけないかしら?」

「何故?」

 アルトは目がギョロリと動いた。

「……あら、結婚相手のおばあ様に会うのに理由がいる?」

 私はにっこりと笑った。

 だけど、まずい話題だったようだわ。

不審に思われた?

でもできればお会いしたい。

 トルータンと結婚したならシリウスからは除籍されているだろうけれど、それでも今この地下帝国で私の味方になってくれるとしたらアルトのおばあ様だわ。

 彼らに懐柔されていないと良いけれど。

 

「ふ」

 アルトは下を向いて噴き出した。

……死んだ」

 アルトは短く言った。

「え?」

 私の聞き間違い?

 おばあ様が連れて来られたのは千年前。

 ハーフとは言えシリウス人。年齢的にはまだお元気なはず。

「殺されたよ。とっくの昔にね」

「!?」

 

 アルトは今まで閉じていた思考を少しだけ開いた。

私はそれを読んだ。

 

「!」

 思わず口を押えよろめいた。

 まさかそんな事が!?

 

 おばあ様は1人しか子どもが生まなかった。

いえ、生めなかった。

1人目の子ども、つまりアルトのお父様をお生みになる時に大量出血をして子宮を摘出しなければならなかったのだ。

トルータンの子どもをお腹で育てるには負担が大きすぎたんだわ。

それなのに子どもを生めないシリウス人に用はない、と帝国は容赦なくおばあ様を切り捨てた。

それも公開処刑!

帝国民の前に引きずり出され八つ裂きにされた。

「酷い……

 自分達の都合で誘拐しておいて必要なくなったら殺すなんて。

「トルータンなら当たり前の考えだ」

「何を言ってるの!あなたのおばあ様の話でしょ!?」

 私は思わずアルトの服を掴んだ。

 

「!」

 さっきより鮮明にアルトの思考が、見える。