――スーツケース核爆弾。

 

 ママの思考を読んだ限りでは第二次世界大戦で日本に落とされた原子爆弾より数倍の威力が推測される。

 それが世界各国で同時に21個のスイッチが押される。

 

 私は頭を抱えた。

 トルータンが地球人の思考を操って核兵器を保持させてる事は光の銀河連邦だって知っている。    ただそれは宇宙法に反しないギリギリのライン。だから咎める事はできない。

 だけどこれだけ行き過ぎた介入となれば別。トルータンの企みを知ればきっと止めてくれるはず。

どうにかして光の銀河連邦にコンタクトを取らなければ。

今この地下帝国にいるシリウス人は私だけ。そう、私がどうにかしないと。

 でもワープもできない。テレパシーさえ使えない。どうやって知らせれば良いの?

「ママ……」

 ママだったら、どうする?

 ちゃんとしたシリウス人だったらこんな時……。

 

「!」

 そうだ!こんな時シリウス人なら!!

 なんでこんな簡単な事に気づかなかったのかしら。

 悪の波動に対抗できるものなんて1つしかないじゃない!!

 

「『愛』……」

 私はつぶやいた。

 それはシリウス人の偉大な力。

『愛』を使う事でシリウス人は思考を現実化させ暮らしている。

 ――私もその力を使う事が、できるわ。

 

「そうよ。『愛』……」

 やってみる価値はある。

彼らに悟られないようにコントロールしながら徐々にこの地下帝国に『愛』を送る。

『愛』の波動数値が一定の数値に達すれば地下帝国の波動が乱れる。

 時空にひずみができる。

 そう、地上にワープできるくらいのひずみができれば良い。

 地上に出さえすれば光の銀河連邦にコンタクトが取れる。

 

「コキが『結婚のはなむけ』って言ってた……」

 結婚式の余興の1つだって。

 つまり結婚式まではスイッチは押されないって事?

 その日はいつなの?

 波動を上げるのは必要最低限にしなければ。

 あまり上げすぎてしまうとバレるリスクも高くなる。

 奴らから式の日にちを聞き出して式の当日に数値が到達するように逆算して……。

 

(ああ!でももしも失敗したら?)

「っ……」

 私は頭を振った。

 駄目!そんな事考えちゃ!

 これしか今私にできる事はないのよ。

 失敗した時の恐怖を考えたら波動が狂う。

 

『愛』『愛』『愛』

 

『愛』

 

 私の思考の戦いは今始まった。