あっと言う間に目の前の景色が変わる。

 

「!」

トルータンが指を鳴らすと私は体の硬直が解け地面に思いっきり尻餅をついた。

見回すと周囲はごつごつした岩だらけ。

 地球の波動じゃない。湿った空気が流れている。

他の星?

「あ」

 私は上を見た。

天井が低い。まるで洞窟。

ここは地球だ。

しかも――地球の内部!!

地表から約10キロってとこかしら。

 

「ほう。よく分かったね。……ん?」

 トルータンは私にゆっくりと近づいてきた。

「!!」

 そして身構える間もなく私の前髪を掴んで乱暴に顔を上げさせた。

「君が何者なのかずっと考えていたよ。地球人のなりをしているが……地球人ではないな。いや、シリウスとの混血か」

「!」

 私の未熟な思考の閉じ方じゃ防御できない。

 あっという間に情報を読まれてしまう!

「ふうん、そうか……へえ」

 トルータンは不気味に笑う。

何をどこまで読まれたのか予測もできない。

「その変装もここでは必要ないだろう」

 パチンとトルータンは指を鳴らした。

 

「!」

 私の姿はいつもの地球人の姿ではなく、元の姿に戻っていた。

 シリウス人特有の水色の瞳に水色の髪に透き通るような色の肌。

「折角だから君の友達を呼んであげよう」

「え?」

 

  パチンッ

 

 トルータンはまた指を鳴らした。

 すると

「真紀!山ちゃん!」

 前の学校の真紀と山ちゃんが現れた。

「ごめんね、こんなところに連れて来られてびっくりしたよね。あのね、これは……」

 真紀も山ちゃんも恐怖で目を見開いている。

トルータンを見ている?

 

 ――違う。私を見てる!

 

「真……

「きゃああああ!!!」

 真紀が叫んで山ちゃんの肩につかまった。

「いやああああー!!!!」

 山ちゃんもその場に座り込んだ。

「真紀。山ちゃん」

 私は2人に近づこうとした。

 

「こないで!!化け物!!」 

「!」

 真紀の言葉が心に突き刺さった。

 

 『化け物』……

(ああ、そうだ)

 だから私は地球人に変装して生きてきたんだ。

 一般の地球人が宇宙人に接触する機会は皆無。

 2人の反応は当然の事。

 分かってる。だけど……

 

「ふはははははははは!!」

 トルータンは笑いながらまた指を鳴らした。

 

 するとどこからともなく違うトルータン達がやってきた。

 そして真紀と山ちゃんを連れて行った。

「待って!!どこへ連れて行く気!?」

「せっかく連れて来たのだ。地上へ帰す必要もないだろう」

 トルータンの食べ物は……地球人の肉だ。

 私は目を伏せた。

 どうしたら……どうしたら良いの。

 こんな時ママだったら……。

 私は半分シリウスの血を持っていながら2人を助ける事もできない。

 

「さあ、君はこっちに」

 トルータンは私の手を引いた。その手は驚くほど冷たかった。

 私は手を振りほどく事さえできない。

「ハーフとは言え私はシリウス人よ!私を誘拐すれば光の銀河連邦が黙っていないわ!」

「ははははは」

 トルータンは笑った。

「それは地上での話だろう。光の銀河連邦といえ、ここ我々トルータンの地下帝国には手出しができない」

「!」

 私はそのまま引きずられていくしかなかった。