次の日パパは塾を辞めるって電話してくれた。

あれから2日が経った。今日は塾の日だ。

(暇だなあ)

私はゴロンとベッドに横になった。

皆、私が辞めるって言ったら驚いてたな。

 

「んー……」

 私はうつ伏せになって足をバタつかせた。

 気にするなって言われても無理。

 光の銀河連邦すら把握していない核兵器を隠し持つあの先生は一体何者なの?

 

「スーツケース核爆弾、かあ」

 チラリと時計を見ると4時。塾が始まる時間だ。

 皆、どうしてるかなあ。

 私は無意識に塾の教室を透視した。

 

「瀬里ったらいきなりだよね」

「でもこの間倒れたじゃん?仕方ないよ」

「学校では元気だったのになー」

 クラスメイトの真紀、山ちゃん、かなちゃん。私の事話してる。

 いつも通りの教室。

 ただ私の席だけが空いてる。

「皆さん、こんにちは」

 都築先生が入って来た。

 おかしいなあ。

 どう見ても普通の地球人なのに。

 

「!?」

 思わず私は飛び起きた。

 誰?あれ。

 都築先生の後ろにマントを着た人がぴったりくっついている。

 服で顔がよく見えないけど地球人じゃない。緑色の肌が見える。

 

  ニュッ

 

「!」

 細長い舌がチョロッと見えた。まるで蛇みたいな舌。あれは――。

 

「トルータンだ……」

 ママの思考で見た事がある。

 ヒト型爬虫類の宇宙人、トルータン。

 光の銀河連邦には加盟していないけれど彼らは高度な技術を持ち地球にも進出している。

 私も人の事は言えないけれど彼らは地球人に変装し地球人として暮らしている。

 数はそんなに多くないけど。そうね、混血も合わせて数十ってとこ。

 ただ地下にも多く住んでいるっていうから実際の数は数百人にはなるのかしら?

 って、今気にするのはそんな事じゃない。

 どうしてこのトルータン、本来の姿でいるの?

 彼らだって地上では変装するくらいの常識持ってるはずよ。

 

 あ、でも。

 塾の教室は騒ぎになっていない。

 普通に授業が行われている。

 地球人には見えないんだわ。

(どうしよう)

 都築先生と同じ。このトルータン、思考が読めない。

 

「……」 

 トルータンって肉食だったわよね……。

 それも地球人の肉を好む。

 まさかこんな人目のあるところで捕食したり、しないわよね?

 

「――」

 ゴクリと私は唾を飲んだ。

 そして立ち上がると塾の廊下にワープした。

 皆から見えないように身を低くして教室の後ろのドアをほんの少し開けて中をのぞいた。

「えー、次の問題は……」

 普通に都築先生が授業をしている。

 あれ?あのトルータンは?

 

「何をしているのかね」

「!!」

 突然の背後からの声にビクッとする。

 

(しまった!)

 トルータンだ!

 嘘!全然気配を感じなかった。

 

  ゾクッ

 

 急に悪寒がしてきた。

 なんて重たい気なの?他の宇宙人とは全然ちがう。

 足が、動かない……。

 

(セリ!)

 目の前にパッと見慣れた背中が現れた。

「ママ!!」

 ママは私の手を掴むとすぐに宇宙船にワープした。