次の日、私は学校が終わると真っ直ぐ家に帰った。
急いでランドセルを机の上に置く。
ママの乗った宇宙船は地球のすぐ上を回っている。
2週間毎日ママに会えるなんて素敵。早くママのところに行こう。
(あれ?)
ママの宇宙船にワープしようとして私はママの宇宙船に乗ってる少年に気付いた。
なんだ、今回の仕事って1人じゃないんだ。珍しい。
ママの仕事仲間には何度か会った事あったけどこの人は初めて見るなあ。
(こんにちは)
とりあえず頭の中で挨拶してみる。
(やあ)
少年はすぐにこっちに気付いて微笑んでくれた。
(あら、セリ。ごめんなさいね、もう少しかかりそうなの)
ママも私に気付いた。
(いいの、待ってるから)
(君がセリだね。いつもシイから聞いてるよ)
少年の思考が伝わって来た。
(はい。えーっと……)
地球人の思考は勝手に入ってくる。
でもシリウス人相手だとちょっと勝手が違う。
ママみたいに気心が知れている人ならともかく初対面の人の思考は波長を合わせないとなかなか読めない。
(あ)
急に少年の思考が入ってくるようになった。
不慣れな私に合わせてくれてるんだわ。
(シイの仕事が終わるまで僕と少し話しませんか?)
(え)
戸惑っているとママがにっこり笑うのが見えた。それで私も少し緊張がほぐれた。
(ええ。喜んで)
私が頭の中で答えると少年はすぐに目の前にワープで現れた。
彼の名前はティグル。ママの仕事仲間で地球観測が仕事。
「そう。シリウス人とはそんなに知り合いがいないんだね。大丈夫、僕の思考を読むのにもすぐに慣れるよ」
ティグルが言った。
「ありがとう。ハーフってそんなに珍しいのね」
ティグルの思考が入ってくる。
ティグルは地球人とのハーフに会うのが初めてだそう。
確かにそうね。私のように異星間のハーフは成人するまで父親の属する星に住む事になっている。
そして成人と認められる15歳になってからも多くのハーフに移住許可は下りない。
特に地球人とのハーフでは私のようにシリウスの能力が強くでない場合が多いのだ。
「勿論いるにはいるんだよ。父親がシリウス人の場合は生まれた時からシリウスに住む事になるしね」
でもそんなに数は多くないのね。
「君ならきっと許可が下りるだろうね」
「ええ、ありがとう。――優しいのね」
私はティグルの思考を読んだ。
ティグルが地球観測の仕事に就いたのは地球を救いたいと思ってくれているからなんだわ。
「当然の事だよ。地球人程度の知能があれば宇宙の兄弟になる事が可能だ」
そうね。地球が光の銀河連邦の加盟星に入れればどんなに素敵かしら。
確かに地球は宇宙の兄弟になるのに可能な知能指数を持っている。でも未だに加入できないのには勿論理由がある。
「核兵器さえ持ってなければ、ね」
私はため息交じりに言った。
そう。それが問題。
地球がこれだけの知能指数を持ちながら加入できないのはそれが原因。
核なんて愚かなものさえ手放してくれれば光の銀河連邦はすぐにだって地球人に正式にコンタクトを取ってオファーをくれるわ。
それだけじゃない。実は既にそうなるように少しずつ仕向けてくれている。
宇宙の兄弟たちは地球人が核を手放すように少しずつ地球の波動を上げたり、一部の地位のある人の思考に働きかけたりしている。
だけど働きかける範囲は制限されている。
過度に地球の波動を宇宙の力で上げる事は許されていない。
「地球人達が争っても、核を使っても、僕達はただ見ているしかできないんだ」
「ええ」
分かってるわ。
地球人が自ら核を手放さなければ意味がないのよね。
決めるのはあくまでも地球人だ。