私は叔母さんの了解を得て外に出た。
エレベーターに乗り、1階へ。
そしていつものベンチに行った。
「さち」
カケルはいつものところにいた。
そのいつも通りさが私を嫌な気持ちにさせた。
「……知ってたんでしょ?」
「さち?」
カケルが私に歩み寄る。
「カケルは知ってたんでしょう!……お母さん、死んじゃうって!!」
私はカケルをキッと見た。
あの日、最後に病院に行った日カケルと会ったのに。
なのに何も言ってくれなかった。
知っていたら、あの日いつも通り帰ったりしなかった。
「どうして教えてくれなかったの!!」
カケルなら知ってたはずなのにどうして?
「……ごめん」
カケルは俯いた。
「だってさち、教えたら病院に残ったろう?」
「当たり前だよ!」
「君はお母さんの最期を看取ったら、僕が知ってる歴史と変わっちゃうから」
「なんで!?今までいろいろ未来の事教えてくれたじゃない!」
「僕に会わなくても!――僕に会わなくても君はお母さんに会う決心をしたし、おばさん家に養子にも行った。学校でのイジメだってもうじき自分で乗り越えられる。それは変わらない事だった。でもお母さんの死を教えたら……君は看取ってしまうから」
「何よ、それ。1番大事な事教えてくれないなんて酷い!カケルなんて大っ嫌いっ!!」
「さち!」
私はカケルをその場に残し走ってマンションの部屋に戻った。
「さっちゃん」
私の顔を見ておばさんは心配そうに立ち上がった。
「ごめんなさい。暫く1人にしてください……」
それだけ言うと私は自分の部屋に入ってしゃがみ込んだ。
そして精一杯声を押し殺して泣いた。