次の日、登校すると上履きがなかった。
(あれ?変だな。昨日入れて帰ったのに)
ここだったよなって名前を確認したけど靴箱にはちゃんと「長井さち」って書いてあった。
仕方なく私は職員室でスリッパを借りた。
ガラッ
私が教室のドアを開けた途端それまで騒がしかった教室が一瞬シーンとした。
「?」
「!」
黒板を見ると「長井、親なし子」とチョークで書いてあった。
(あー……)
私はランドセルをロッカーに入れると自分の席に座った。
隣の子と目があったから「おはよう」って言ったけど、目をそらされてしまった。
「おはよう」
先生が入ってきた。
「!」
そしてすぐに黒板のいたずら書きに気づき、怒った顔で皆を見た。
「誰ですか?これを書いたのは?」
「森口君達でーす」
前の方で誰かが言った。
「ひっでー!普通言うー?」
森口君、らしい子がおちゃらけながら立ち上がった。
「森口君、朝の会が終わったら職員室に来なさい」
そう言って先生はラクガキを消した。
そして皆の方を向いて言った。
「長井さんは事情があって新しいお母さん達と暮らしていますがからかうような事ではありません。悪ふざけはやめるように」
(あーあ)
そんな事言っても無駄なのにな、先生。
(上履きもきっと見つからないな。おばさんになんて言おう)
スリッパをはいた足を見る。
こんなの「あおぞらの家」の子は慣れてるよ。
思った通り、それからもイジメはなくならなかった。