「さち!お帰り。ランドセル置いたらすぐ食堂に来て」 

 あおぞらの家に帰ると玄関で小川先生が待っていた。

 

「ただいま。なんでですか?」

「いいから。話があるの。急いで」

 小川先生が私を急かす。

 ずっとここで待っててくれたのかな。

 

 なんだろう?と思いながら急いでランドセルを置きに部屋に行った。

 ほのちゃんなら熱が下がったはずだし……。話って言われても……。

 

「先生」

 私は食堂に行った。

「座って」

 促されて私は自分の椅子に座った。

「あのね……」

 小川先生は言いにくそうに口を開いた。

 

「お母さんの代理の人から連絡があったの」

 

「えっ」

(お母さん……?)

 

 ドクン

 

 胸の音が鳴ったようだ。

 ドキドキする。

 お母さんなんて私にいるの?

 

「お母さんの叔母さんで長井さんて方……。それでね、さち。お母さん、今、病院にいるんだって」

(病院?)

「お母さんね、病気でこの2、3年入退院を繰り返してらしてね。それで……、その、あまり良くないのよ。それで、その、1度で良いからさちに会いたいって」

 

  ガタンッ

 

 私は思わず立ち上がった。

(『会いたい』……?)

 

「嘘……」

 私がどこにいるか、ちゃんと知っていたんだ。

『会いたい』なら今までいくらでも連絡する機会はあったはずだ。

 

「どうする?さち」

「私……」

(会いたくない!)その言葉は飲み込んだ。

「向こうはさちの気持ちを優先させて良いって言ってくれてるわ」

 私はうつむいた。

  

『悪い人じゃないんだ』

 

 さっきのカケルの言葉が頭の中で聞こえた気がした。

「私……」

 

「会いに…行っても、良いんですか?」

「もちろんよ!その為に連絡が来たんだから。じゃあ、支度してくるわね」

 小川先生は立ち上がった。