ソルハが連れて来られたのは地下通路。
同じようなドアが幾つもある。
その内の1つの前に立つと助手はカードキーをかざした。
「どうぞ、この中ですよ」
うながされるままにソルハは部屋の中に入った。
中は薄暗かった。
「!!ミラッ!!」
どれ程この時を待ち望んだ事だろう。
目の前にミラージュの姿があった。
ソルハはミラージュの元に駆け寄った。その途端――
ガンッ
「うわっ!!」
何かにぶつかりソルハは勢いよく床に倒れた。
「痛……。何だ、これ?ガラス……?」
手探りで触ると目の前にガラスのような壁があるのが分かった。
「!」
パッと部屋の電気が点いた。
「ミラ」
明るくなった途端ソルハは仰天した。
ミラージュがおかしい。
表情がないし、立ったまま動かない。
「ミラ?ミラ!」
呼びかけてみるが返事がない。
「!!」
ふとミラージュの後ろに何人ものMIXが立っているのに気づく。
彼らもまた動かない。
ただ立ってそこにいるだけだ。
「ミラ……?」
後ろを振り向く。
助手の男は眉一つ動かさず言った。
「それ、剥製ですよ。NO128はここに来る途中に死んでしまいましたからね。ペットにする事はもうできませんが置き物としてはまだ売れますから」
(剥……製?)
『剥製』
『死んだ』
頭の中をその言葉がぐるぐると回る。
「う……うわああああああ!」
ドンッ
ソルハは手錠のかかった手でガラスを叩いた。
「……出せっ!ここから出せ!!ミラを返せっ!!」
ドンッ ドンッ
体ごとぶつかってガラスを割ろうとしたがびくともしない。
「無駄ですよ。さあ、こちらにいらっしゃい。収容所に案内します」
ソルハは右手で反対の手にはめた腕時計のボタンを押した。
パンパカパーンッ
パッパッパッパッパカパーンッ
ファンファーレが鳴り、巨大なびっくり人形と紙ふぶきが飛び出した。
土星で亮一に買ってもらったおもちゃだけれど一瞬の隙を作るには充分だった。
「えいっ!」
ソルハは男を蹴飛ばすと部屋から逃げ出した。
「NO129が逃げました」
男は無線に向かってそう告げた。