部屋には亮一と院長だけになった。

 亮一は院長の方を向いた。

 

「……久しぶりに息子と会ってもあんたはソルハにしか……研究材料にしか興味がないようだな」

「フン。医師免許を取って大学院に進んだまでは良いが、休暇事にフラフラしおって。お前など息子でも何でもないわ」

(この人は何も変っちゃいない)

 亮一はあの時のことを思い出していた。

 

 そう、あの時。13年前のあの時もそうだった。

 ――空襲で研究所が焼けるとMIX達は一斉に逃げ出した。

 その内の何人かが亮一と妹の薫を人質にとり宇宙船を奪い宇宙に出た。

 

すると父親は息子と娘が乗っている事を承知でその宇宙船を攻撃してきたのだ。

自分の子どもの命よりMIXを逃がさない事を、自分の体面を、地位を名誉を守ろうとしたのだ。

 

 攻撃を受け船が動かなくなるとMIX達はすぐに脱出する事にした。

宇宙服を着たMIX達が次々に宇宙空間に出て行った。

 

最後に1人の女のMIXと亮一と薫が残った。

宇宙服は2つしか残っていなかった。

そのMIXは大人用のぶかぶかの宇宙服を亮一と薫に着せると2人を船から逃がした。

 亮一がそこで見たものは火に焼かれながら落ちて行く宇宙船だった。

その女性はまだ船の中だった。

そして船は爆発した。

その爆風に飛ばされ亮一は気を失った。

 

次に目が覚めたのは1週間後、見知らぬ惑星での事だった。

親切な星の人達が亮一をコロニーまで送ってくれた時父親は逃げ出したMIXの後始末に追われ亮一に見向きもしなかった。

 

 

「まあMIXを連れてきたのはお前にしては上出来だ」

「!」

 亮一はハッと我に返った。

気がつくと父親は亮一の手錠の鍵を外していた。

「院へはいつ戻るんだ?」

 父親のその問いかけに亮一は答えなかった。

 

「……あんたにはどうでもいい事かも知れないけど、――薫が死んだよ」

 それだけ言うと亮一は部屋から出て行った。