パッパカパーンッ パッパッパ パッパカパーンッ!!

 

 その朝ソルハはラッパの音で目を覚ました。

どうやらお祭りが始まったようだ。

 

「やっと起きたね。亮一はもう先に行ってるよ」

 仕事帰りのアリスがそこにいた。

「やべ……、俺も行かなきゃ」

「うん。お店の方はギルに頼んであるから私も見に行くわ」

 

 

 

 亮一とソルハが出場する宇宙レースは競技用の船で土星の周りを1番早く1周した者が優勝。

レースに参加するにはパスポートはいらないから簡単に参加する事ができる。

各地点に中継用の人工衛星が飛んでいるから100パーセント安全とは言えないが宇宙空間に出たら全速力で星から離れれば良い。

 そのレースのスタート地点は市から少し離れている丘の上だ。

 

 子ども達はまだ寝ていた。

ソルハは黙って皆に一礼をするとアリスと一緒に家を出た。

 

 

「やっと来たか」

 人混みをかき分けそこへ行くと亮一はもうレーサー用の服を着て待機していた。

 宇宙船を操縦できないソルハは亮一の乗る船にこっそり潜り込む事になっていた。

あと30分くらいでレースは始まる。

他の出場者達や観客達で辺りは賑わっていた。

 

「随分人がいっぱいいるんだな」

 ソルハは対戦者達の顔ぶれを見回した。

「それに皆手強そうだぞ」

「馬鹿ね、勝たなくていいのよ」

 アリスが笑った。

「あ、そうか」

 

「おいっ!!あれっ!!」

 ごった返しの観客の中で誰かが叫んだ。

途端に皆騒ぎ出す。

 

 見ると向こうの方に煙が見える。

 

「市の方だわ……」

 アリスが呟くように言った。

そして走り出した。

市場にはギルがいる。

 

「待て!!俺達も!!」

 それを追おうとしたソルハの声にアリスはハっと我に返った。

そして2人の方を向いた。

 

「駄目っ!!市とここを往復したらレースが始まっちゃうわ!」

「けどっ……」

「きっとボヤよ。こんな事で折角のチャンスを無駄にしないで!!」

 その言葉に2人は言葉につまった。

 

 アリスはにっこり微笑んだ。

「ここでお別れ、……しっかりやってよ!!」

 それだけ言うとアリスはまた市の方へ走り出した。

 

「サンキューな!!気ィつけろよ!!」

 ソルハはそう叫ぶと亮一と共にレーサーの待合テントの方へ向かった。