ソルハが目を覚ましたのはもう夕方だった。

見知らぬ天井が目の前にある。

 

「母さん」

「母さん!」

「姉ちゃん気がついた!!」

小さな子どもの声が聞こえる。

 

「ああ本当だ」

ひょいと痩せたおばさんがソルハの顔を覗き込んだ。

その横にはわらわらと子ども達がいる。

(そうだ。俺倒れて……)

 ソルハはボーッとした頭でようやくその事を思い出した。

 

「俺……」

「喋らなくていいのよ。私はアリスの母親でマリラ」

 起き上がろうとしたソルハをマリラは優しくベットに戻した。

 

「気がついたの?」

 声と同時にアリスがドアから入って来た。

「今日はもう店終いなの。もう少ししたら今度は別のに行かなきゃだけど……。その前に話があるの。もう平気?」

「ああ」

 ソルハは頷いた。

 

 アリスは商売道具の大きなリュックを床に下ろすとソルハの横に座った。

 

「亮一は?」

 亮一の姿が見えない。

「あんた達の船が見つかった所へ様子見に行ってる。それでね、船の事なんだけど……」

 船は身分証明書がなければ買う事ができない。

 

だからアリスはある提案をしてくれた。

10日後に町で年に1度のお祭りがある。

そのお祭りで開催される宇宙レースに紛れればこの星を脱出できるかも知れない事をソルハに話した。

そしてそれまでこの家にいても良いと言った。

 

「……けど、何で俺達にそんな親切……」

「おせっかいなのは土星っ子の気質。あんた達なんだかほっとけないのよ。聞けば悪い奴に捕らえられたお姉さんを助けに行く途中だって言うじゃない」

どうやら亮一が事情を説明したようだ。

まさかソルハがMIXである事までは話してないだろうけれど。

 

「家は子沢山だからね、遠慮しなくて良いのよ。ま、裏の畑を手伝ってくれたらだけどね」

 マリラが口を挟んだ。

 

今年は丁度畑を少し広げようと思っていたところ。

この時期人手が増えれば言う事なし。

 

「けど、警察が来たら迷惑が……」

「だからそんな事気にしなくて良いってば」

「こんな時はお互いさまよ」

アリスもこの家の人達もかなりの世話焼きのようだったがソルハはこういう人達が嫌いじゃなかった。

 だからそのありがたい好意に遠慮なく甘える事にした。