ふと気づいたら、今年は三島由紀夫没後50周年でした。コロナのせいか、大きなイベントもない静かな50周年です。私は息子の影響で読み始めたので、私にとって三島由紀夫は、好きな作家というよりも興味のある人物です。

 

以下は彼の経歴のほんの一部です。10代から祖母や母の影響で文学を志すも、父親のアドバイス(というか強要)で東大法学部から大蔵省に、そして入省後9ヶ月で退官、「仮面の告白」を出版する。

 

本人がサラッとこなしているから気づかないけど、その能力が半端ない。特に知力がすごい。親に言われて方向転換して、特に思い入れもなくスンナリ東大と大蔵省に入り、さらに高級官僚の席を蹴って人気作家に転身って。一般人は嫉妬する気も失せます。

 

行動力もすごい。ラディゲに憧れ10代で処女作を出版すべく、紙のない時代に出版社を駆け回って紙を確保し、書評を書いてもらうべく有名人の家を回る。10代の若造でこの行動力だもの。そりゃ40代で民兵も組織するでしょう。

 

ただしこの10代の行動力が仇となって、戦後「仮面の告白」で芥川賞を逃し、その後もタイミングが微妙にズレてノーベル文学賞もとれなかった。さっきのタロット3枚引きじゃないですが、自分の思考を優先すると、投げ技ばっかしで受身が取れず、「あれ?」と思うことが増えていく。

 

最後の行動については賛否両論(否の方が多い)ですが、良い悪い・好き嫌いの評価は置いといて、兎にも角にもあれが実行できたことが三島由紀夫的。まぁ普通はやらないし、綿密に計画したところでできることじゃない。総監室を占拠した際には自衛隊員3名に斬りつけていますが、あの状況で生まれて初めて日本刀で応戦して、トチ狂って◯さないところがすごい。ここ評価低いけど、これは本当にすごいと思う。

 

さすが肉体よりも先に言葉があった(「太陽と鉄」)という人だけのことはあると、ただただ瞑目して祈るのみです。

 

三島由紀夫が猫好きだったということはあまり知られていませんが、実家では猫をとても可愛がっていたんだそうです。ほっとできるエピソードですが、三島由紀夫にそっと寄り添えるのは猫くらいかもと思うとちょっと悲しい。