昨年秋に上演された「WELLS-博士とはじまりの恋人-」の待ちに待った続編です。


エイダ博士の栗原みささん、カミーリャ中尉の木下かれんさんはじめ、同じ役を引き継がれた方もいれば、今回はまた別の役として物語に関わってくる前回出演者の方も。





なので前回観た人は、初めは「おや?」と思ったかも知れませんね。







そして、前回は男性出演者が下田修平さんお一人でしたが、今回は作品のスケールアップと共に多数出演。アウルム帝国のみならずメタレイア合衆国軍も登場。レジスタンス「魔女の弟子」を結成したエイダらと共に三つ巴の様相を見せ、一気に世界感を広げた物語となっていました。








観劇備忘録のこのブログの第一回目が前作品でしたので改めて読み直しましたが

薄い…

まあ、観劇気分を盛り上げくらいは何とか…






ただ、開演前に前回のあらすじをアナウンスしてもらえたので世界観の同期は完了!






スムーズに劇の世界へ。











もうね、冒頭からエモい。








戦場と化し荒廃したアウルム帝国の街を彷徨う、希望を見失ったかのような人の群れ、群れ…


帝國陸軍の荒くれが、か弱き人々を追い払い、逃げ遅れた一人を更に吊し上げようとした、正にその時! 


正体を現した見覚えの有る一人の女性、その人こそ、かつて「蒸気の魔女」と呼ばれ、今はレジスタンス組織「魔女の弟子」を率いるエイダ博士(栗原みささん)、


そして呼応するかの様に飛び出したレジスタンスの仲間たちが屈強な軍隊を蹴散らしていく。





もうこの流れが自分にはツボ過ぎてカッコ良過ぎて。。。




ツカミのこの構成でレジスタンス勢力の抵抗の強さが窺い知れます。




 


オープニングテーマ時も、

作中の因縁のあるもの同士が対峙していく、という、アニメのオープニングを思わせる象徴的な構成に。



のっけから魅せまくりで最高でした。









物語全体を通して「戦争と科学の発展」、「全体主義への抵抗」、そして「ステラ」を通して「戦争の否定」が描かれていきます。






自らが生み出した科学を戦争に利用される事に苦悩する事で結ばれたエイダとカミーリャ。



軍人としての本分を全うする事と、自らの本心に揺れ動くレグルス。疑問を感じながらも軍人の本分を全うしようとするロランドとアグリオ。






そして国防の名の下、覇権を手にしようとする国家の権力者達の思惑。



前作よりも壮大な世界観の今回は人間ドラマもより複雑に絡み合い縺れていきました。






前回もガンアクションは多少ありましたが、今回は更に剣を用いた殺陣も加わり、全編に渡りスリリングな攻防を魅せてくれました。



序盤、鉄パイプを振りかざしレジスタンスの一員として戦闘に参加してた志村玲那さんのリディアが時折、バトントワリングの様に華麗にパイプを扱う姿は「おっ!」て感じで目が留まりましたね。




アウルム軍は蒸気兵なる甲冑部隊が剣を振りかざして戦い、メタレイア軍人は拳銃やオートジャイロ?からの空爆と、両軍の戦術観の違いが明確なのも、両国の対立の深さを一層強調してくれます。





そう、両国家の違いと言えば互いの軍の最高司令官、の、補佐を務める女性の個性も興味深い。




アウルムを自らの手に収めようとする野心家ザグレブには同じく野心家の毒婦クリスティ(遠藤三貴さんの悪女っぷりがとにかく魅力的!)。



メタレイアを治めるアジテーション過剰気味なカリスマ性を秘めたヴェイロンには控え目ながら常にヴェイロンの暴走に心を痛めるフィークス、という真逆の個性の持ち主をあてがう、というマッチングの妙がより権力者のエゴを際立たせてくれました。

悪い男達だ!羨ましいな!
ただ己を庇って倒れたフィークスを「生き返らせる」と誓う場面では唯一人間らしさも覗かせて。。。





そしてストーリーを大きく動かしていく「ステラ」と「アルバ」という二人の少女たち。健気に、時に力強く、そして残酷な運命に翻弄されていきます。




タイトルにある「夜明けの星」はステラとアルバ二人の名前に因んでたんですね。 


あれこれ含みを持たせた終わり方だったんだけど

やはり本音で言えばモヤモヤが残ると言うか、

その辺どうなんでしょうかね?…





    




個人の見どころポイントと言えば…





前作最終盤、正体を明かして観る者をゾクっとさせた岩崎舞さんのアリサ。
今回は前作の愛敬は全く無く、凄腕の諜報部員としてバブル期のデカい携帯電話みたいな無線機を持って暗躍。ただ彼女の言葉にも含みが残り…



カミーリャの士官学校の同期生にしてアウルム軍諜報部のエース、キーラの若菜唯さん。男役の様な勇ましさと、任務の為なら友も裏切る冷徹さは相変わらずでしたが、最後の最後に人間らしさを見せ、それが仇となり…無常なり…



根っからの職業軍人、命令に忠実、私心なき武人ロランド大尉の小川大悟さん。ランスやマルコ達の前に立ちはだかる姿はほぼターミネーター。怖い。けど漢としては惹かれる存在。



前回は立ち居振る舞いも凛々しきメイドさんだった東條詩織さん、今回はなんと娼館を仕切る気風のいい女丈夫。すごくハマってました。
自分も怒られてみたい…いや何でもないです。



カミーリャ役は木下かれんさん。彼女が立ち上がらなければ今回の世界は動かなかった重要な存在。キーラ中尉も認めた、この一年での成長。エイダを支える大きな存在にまでなりました。
栗原さんも支えたくれてみたいで、ありがとうございます笑





そして、エイダ博士の栗原みささん。

印象的なシーンが二つ。

思い出の中のウェルズ語り合う場面での穏やかさ。

そして思わぬ形で「エルビス(ウェルズ)」と邂逅し、電話でヘスティアへ迷いを打ち明けるシーン(ここが一番グッと来た場面)。

皆の前で気丈に振る舞って見せる彼女が、心を許す相手にだけ本心を明かす姿は、相手への愛情を感じさせてくれる素敵な表情でした。

エンディングの中で解放されたと思われるヘスティアと抱擁する場面も良かった。







舞台を見る為に毎回約2時間かけてやって来る田舎者ですが、作品も概ね2時間。見終わって帰る時間も2時間。

どれも同じ2時間だけど、その価値は全く違います。

この作品に触れた時間は、この先もずっと残しておきたい貴重な2時間になりました。

そして作品を噛みしめながら帰る2時間は「時間を感じさせない2時間でした。


客はただ座ってるだけですが、演者さんはじめ作品に関わった全ての方が「WELLS」の世界へ背中を押し、手を差し伸べて引っ張ってくれたおかげ作品世界の「目撃者」にしてくれました。



ありがとうございます、そして公演お疲れ様でした。


やっぱり、この先が気になるなぁ、皆も気にしてるようだし…。





P.S エイダの通り名「蒸気の魔女」ってなんか美顔器のカリスマみたい。
あと、生でED曲を披露された琴美さんがとにかく素晴らしかったけど、はじめ舞台に姿を見せた時は「真のラスボス」が登場したと勘違いしました。m(_ _)m

2019を締め括るに相応しい作品でした!