〇「1月29日」風月抄「包丁式」
 正月には、く各地の寺社で「調理師」による「包丁式」行われますが、この「包丁式」とはいったいどんなものでしょうか。。

 

   

       

    
          「金毘羅さんの包丁式」


 庖丁式(ほうちょうしき)とは、平安時代から伝わる、庖丁師により執り行われる儀式で、烏帽子・直垂、あるいは狩衣を身にまとって、大まな板の前に座り、食材に直接手を触れずに、右手に庖丁、左手にまな箸を持ち切り分け並べるという、料理の作法のことです。。

 

  

           (包丁初め)佐賀・松原神社

 

    

 

      

 ところで、どこの家庭でも、台所用品として欠かせないのが「包丁」ですが、この「包丁」というのは、いったいどういう意味なのでしょうか?

 

           

         (包丁もいろいろ)


 もともと、この包丁は語源的には、紀元前4世紀ころに書かれた中国の古書「荘子」の中に出てくる言葉で、その「養生主扁第三」の初めにこの言葉が出てきます。

 

     
          (荘子)


 この本によると、その頃、梁の恵王と「包丁」という人物が「解牛問答」という対話を行っています。包丁の包は、料理人のことで、丁がその名前でした。今でいえば、「板場の丁さん」とでも言いましょうか。。


 この丁さんは大変に料理が上手で、その名声のために恵王に招かれて、王の目の前で一頭の牛を解体することになりました。
 その時、丁さんが、刃物を牛の体にグイと突き指して、スーツと引くと肉がきれいに切り分けられています。

 

      
             (牛刀)


 感心した恵王が、「どうしてこんな見事な刀さばきが出来るようになったのか?」と、尋ねたところ「丁さん」は「初めて牛を料理したときは、皆目,見当が付きませんでしたが、三年間の修行を積んだおかげで、今では、牛部分がどこに、どんなふうにあるのか、外から見ただけで分かるようになりました。この商売を始めてから19年、数千頭の牛を切りましたので、ぴったりと牛の肉が切り取れるのでございます・・」と答えました。

 

       
           (中華包丁)


 この話に感心した恵王は「お前の話を聞いて、人生の生き方がよく分かった‥」と膝を叩いて感心しました。これがいわゆる「解牛問答」と言われるもので、この料理人の名前から「包丁」という言葉が生まれています。
 従って、語源的にいえば「包丁」は、もともと動物を調理するためのもので、野菜を切るための刃物は「包丁」ではないのです。ですから、野菜用の包丁は「野菜包丁」とか「菜切り包丁」というのが正しいのです。