花だより 「ホウの花」

 

   

 タイサンボクに劣らず、大きな花を咲かせるのが「ホウノキ」です。 
 朴(ホオ)の木は、日本・中国に分布するモクレン科の落葉高木で、大きなものは高さ30mにもなり、30センチ以上もある大きな葉が特徴です。

 

 


 ホウノキは日本全土の山地や林に自生していますが、最近は庭木や街路樹としても使われています。古代はホウの葉に食べ物を盛ったり包んだりしたそうで、食べ物を「包む葉の木」という意味で「包の木」となったと言う説もあります。

    昔の女の子は、この大きな葉で皿を作ってままごと遊びをしました。

 

 

                          (大きくて華麗なホウの花)


 5,6月ごろに咲く大きな白い花は遠くからでもよく目立ちますが、20m近い高い木の上に、花も上を向いた皿状なので、下からではなかなかうまく撮れません。
 花の香りが強く、花びらは9枚、わずかに黄色味を帯びた白い大きな花を開きます。
 ホウの花は、初めに雌めしべが開き、次の日に雄しべが開いて自家受粉を避けています。 自然の摂理ですね。

 

                     朴の花なお青雲の志     川端茅舎 

 
 〇「朴の実」

 

 

 

 

 ↑ 5月半ばに咲いていたホウの花が、月末にはこんな大きな実を結んでいました。
 朴(ほう)の木材は柔らかくて締まりがあるので、刀の鞘や版木、下駄の歯、マッチの軸木などに使われていますし、火にも強いので金庫の内側の板にも使われています。。

 

   

                   (ホウ歯の高下駄)         (学生時代の司馬さん・いつも片手に本を・・)

 

 昔の学生は太い鼻緒の「朴歯(ホウバ)の下駄」をはいて街中を闊歩したものです。
 若き日の司馬遼太郎さんが、母校のコンクリートの階段を下駄履きのまま下りてきて、運悪く生徒監の教授にみつかりました。頬っぺたをなぐられて、自慢のあの黒ぶちめがねが落ちて、割れてしまったのを覚えています。

 

   

       (谷崎潤一郎・春琴抄)         (映画・お琴と佐助)

 

 私もガラにもなくバンカラにあこがれて、下駄履きで登校していました。
 下校時に、大阪の上本町の台地から下寺町の方へ、長い石段をカランコロンと音をたてながら、降りて行った日々のことを今でも思いだします。 日本橋の古書店「天牛本店」に立ち寄って、古本を漁る日々でした。

 ふと、石段の途中にある寺の裏門から境内に入ってみたら、谷崎潤一郎の「お琴と佐助」「お琴の墓」がひっそりと立っていました。
 あのころの朴歯の下駄の音が忘れられません。遥かに遠いむかし、奏でていた懐かしい青春の下駄の音です。
    
        朴(ほう)散華 即ち知れぬ 行方かな    川端茅舎 


                                                 しらん