＜パラダイスの夕暮れ (Varjoja paratiisissa・芬・1986)＞ ★★★★

私は、フィンランドの映画監督アキ・カウリスマキの作品が好きで、今までに＜レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ＞、＜マッチ工場の少女＞、＜過去のない男＞、＜街のあかり＞、＜枯れ葉＞などを見ています。大体が庶民、特に労働者階級の日常を独特の哀愁を漂わせて淡々と描きながら、最後に想定外の行動をとって終わり、殆どが90分以内というのも気楽に見られます。今回、CATVで見たこの作品は上記の諸作品よりも前の彼の初期の作品のようです。

＞ごみ収集車の運転手のニカンデルは、行きつけのスーパーのレジ係イロナに好意を寄せ、デートに誘いますが、会話が噛み合わず、途中で帰られてしまいます。職場の親友メラルティンは何かと気を回して二人の仲を取り持ちます。ところが、イロナは仕事を解雇され、腹いせに小さな金庫を盗みだして、ニカンデルのアパートにやって来ます。ニカンデルは金庫をこじ開けようとしますが開かず、イロナが自宅に戻ったところを窃盗犯として逮捕されたことを知り、密かに店に金庫を返しに行きます。金庫があったと言う事で彼女は釈放され、一緒に暮らすことになります。彼女は洋品店の店員に就職します。しかし、何かと口論も多くしっくり行かず、イロナは女友達のアパートに去ってしまいますが、二人とも空虚感に襲われ、ニカンデルは自暴自棄から喧嘩して殴り倒され、入院騒ぎになります。

退院して職場復帰したニカンデルはメラルティンと組んでごみ収集を再開しますが、イロナの働く店の前を通りかかると止まって、店に入っていきなり「結婚して新婚旅行に行こう」と言い出し、イロナはそれを受け入れます。メラルティンの運転するトラックは2人を乗せて港へ行き、タリン行のフェリーに乗せます。埠頭でメラルティンは去って行くフェリーを見送ります・・・・・

決して美男美女でない中年の孤独に悩む2人の焦りと憧れを独特のペーソスを交えた展開は、いかにもカウリスマキ調で引き込まれましたが、ラストが拍子抜けでした。タリンと言えばフィンランド湾を挟んだエストニアの首都、EU加盟国なのでいらないのかも知れませんが、作業着のままでパスポートも大金も着替えも持っていないでどうやって暮して行けるのかと心配しました。

それと、気づいたのは主人公2人だけでなく、登場人物の殆どが常に咥え煙草をしていることで、画面から紫煙が漂って来そうでした。カウリスマキ自身もヘビー・スモーカーなのかも知れませんが、煙草を吸ったことのない私からすれば、あんな煙草臭い人たちと接するのは嫌だなと思いました。