＜葬送のカーネーション（Bir Tutam Karanfil・ﾄﾙｺ・2022）＞ ★★★★☆

半年ぶりに映画館で見ました。妻の遺体を妻の出生地である隣国へ埋葬するために、延々と棺桶を引きずって歩いたり、ヒッチドライブで行く老人とその孫娘を描いた作品です。

原題をGoogleで翻訳したら、“ひとつまみのクローブ”と出ました。英題は、“Cloves & Carnations”となっています。クローブはハーブの一種でスパイスにも使いますが、日本ではなじみがないので、カーネイションだけを使ったようです。カーネイションは、終幕でその孫娘が祖母の墓に１輪捧げるシーンにちらっと出て来ます。

＞トルコ南東部で、年老いたムサは、亡くなった妻の遺体を彼女の故郷の地に埋葬するという約束を守るため、棺桶を引きずって旅をしています。時には親切なドライバーが同情して彼らを運んでくれます。両親を失った（らしい）孫娘のハリメは嫌々ながらついて来ますが、終始無言です。ムサも殆ど無言ですが、旅で出会う様々な人たちからは、人生についての様々な喋舌を聞きます。時には野宿となり、ハリメが寒かろうと棺桶から遺体を取り出して、その中で寝かせたりします。道中で棺桶も傷み、親切な大工はこの方が軽くて丈夫だと、商売ものの段ボールで棺桶を作って遺体を移し変えます。遂に、国境に到達しますが・・・・・・

出会う人々は誰もがお喋りでまくしたてますが、反対に主人公のムサは殆ど話しません。孫娘に至っては最初から最後の祖父を呼ぶ声以外は全く無言で、その対比が絶妙でした。

愛妻との約束とは言え、白布でぐるぐる巻きにしてあるとはいえ、遺体を何日もかけて運んだら腐敗したり破損してしまいそうだし、法的に認められるものかどうかと思いますが、そういう理屈は抜きにして、一種の人生哲学の映像化のような内容でした。

ただ、歩く速さが当然１時間に１～２kmでしょうから、映画の運びもそれに合わせて緩慢としていて、退屈感は免れませんでした。

BGMは一切なく、村人たちの歌や太鼓以外はすべて自然音だけ、それもほとんど風の音ばかりで、荒涼とした高原の風景と旅する２人の心中を際立たせていました。