＜サイエン復讐の森 (Sayen・チリ・2023)＞★★★☆

南米大陸では資源獲得のために自然の乱開発が進み、自然環境にも悪影響を及ぼしているようですが、日本ではあまり問題視されていないのは残念なことです。この映画は、そうした南米大陸の一国チリの映画で、白人企業の森林破壊に反対した祖母を殺された主人公が復讐に挑む作品です。映画の出来としてはいま一の感がありますが、この問題を広く周知させる一助にはなっていると思いました。２０２３年公開と言う極めて新しい作品です。

＞チリ南部の森にすむマプチェ族の若い女性サイエンは、新年を祝うために村に戻って来ます。そこへ、この土地が大量のコバルトを埋蔵していることを知ったマクシモの営むスペイン企業が、この土地を買収しようと息子のアントニオの率いる一行がやって来ます。彼女の祖母がこれを激しく非難したところ、祖母は射殺されてしまいます。彼女の父もかつて白人との抗争で逮捕殺害されています。（母親は不明）辛うじて逃亡したサイエンは祖母と父の仇を討つために、少女時代、村の戦士として鍛えられた知識と技能を武器に単独で立ち上がります。県知事も警察もはマクシモに癒着していて、彼女をテロリストとして捜索する一方、アントニオとその手下の反撃で再三に亘って絶体絶命の危機に陥ります。しかし、順次、手下共を始末し、遂に湖上での激しいボートチェイスの末、サイエンはアントニオを倒すことに成功して、祖母と父の仇を討つことに成功しますが、官憲の目を逃れるため、男性に変装して通りがかりのトラックに便乗して故郷を去って行きます。

祖母を殺されたサイエンは、アントニオのいるキャンプに潜入して、彼らが私欲のために先祖伝来の土地を強奪しようとしていることを知りますが、彼女が立ち上がるのはその陰謀を阻止するという大それた義憤ではなく、祖母や父の仇を討つという単純な家族愛であることにむしろリアリティがありました。

ジャングルの中の逃走や吊り橋の上での乱闘、奪ったバイクによるカー・チェイス、湖上のボート・チェイスとアクションとしてはサービス精神満点ですが、激流に流されたはずなのにいつの間にかナイフを持っていたり、衣装が変わっていたり、ツッコミどころも随所にありました。90分の中にあまり盛り込まず、もう少し丁寧にサスペンスを盛り上げた方が良かったと思いました。

＜サイエン 復讐の森 (Sayen・チリ・2023)＞

＜サイエン復讐の森 (Sayen・チリ・2023)＞