No3 ギャルおじさん
かつて、妙なウワサが飛び交っていた。
ジャムおじさんの顔をしたギャルが夜の渋谷を徘徊しているというのだ。
この怪情報の真偽を確かめるべく、渋谷駅周辺に張り込んでみることにした。
始めは、「きっと、寝ぼけた人が、あまりかわいくないけど気のよさそうな太めの女の子と見間違えたのだろう」 というぐらいにしか考えていなかった。
しかし いたのだ! ギャルおじさんは!!
でも、これじゃあんまりにもジャムおじさんじゃないか!
女装したジャムおじさんそのものじゃないか!!
わたしは急いで近づいてゆき、これだけは聞いとかなければならないと思い声をかけた。
「ジャムおじさん!こんなところであんたいったい何やってるんですか?」
すると、ジャムおじさんの顔をした彼女は苛立たしげに答えた。
「わたしは、いじわるな魔法使いに魔法をかけられて、ジャムおじさんの顔にされたのよ。でも、こころは17歳のギャルのままなの!ジャムおじさんの顔をしているからってわたしを外見で判断しないでよ!わたしは自分のしたいようにして生きてゆくのよ!放っといてよ!」
足早に立ち去ろうとする彼女の顔は、星のない夜空の満月のように美しく気高くそれでいて少し淋しげで、また満月のように丸い形をしていたのだった。
それからしばらくすると、ギャルおじさんのウワサはパッタリ耳にしなくなった。
ギャルおじさんにかけられた魔法が解けたのか、はたまた、ジャムおじさんが人に言えないような趣味を自制するようになったのか。
結局、ギャルおじさんの正体について、真実は闇の中だ。