さて、いよいよ最強トリオが降臨です。
私は嫌々最寄りの駅まで迎えに行きましたが・・・「お?」
と、思いきや2人?社長がいません。
総務部長とサービス部長の2人だけ。営業部長もいません。
車で話を聞いたら、何でも大きい商談が出たから社長と営業部長はそちらに向かったそうです。
「ラッキー!」
私はほくそ笑みました。
すると総務部長は、
「お前、何ニヤニヤしてるんだ?」と。
私は「緊張すると口角が上がる癖があるんです」と答えました。
嘘ですが。
営業所に到着し、二人を会議室まで案内しました。
営業所長を交え、4人で作戦会議の始まりです。
そもそも何で今回の問題が起きたのか?と言う議題です。
話し込んでるうちにベテランの営業マンの先輩が会議室に入ってきてこう言いました。
「昔からだよ・・・。あの社長はワガママ度で言うとこの辺でNo.1だな」と。
そうなんです。
話を聞くと、昔から高額請求が行くと、決まって使う手口だったらしいのです。
「社長だせ!!」と。
ただ、運が悪く、ベテランの先輩と私がテリトリーを交換し、若輩者の私が担当になった事と、当社の社長も代わったばかりで、今回のユーザーさんの対応が後手後手に回ってしまっただけの事だったんです。
私は先輩に尋ねました。
「今までどう対処してたんですか?」と。
すると先輩営業マンは言いました。
「社長、俺が休日に出勤して修理した分を請求して無いんだから、値引は10%で勘弁してくれ」と。
その時初めて知りました。
先輩は休日までお客様の為に飛んで歩いているんだ、と。
私はその瞬間思いました・・・
「やめてくれ。その悪しき伝統を。俺まで休日に仕事しなければいけなくなる!」と。
なんやかんや言いながら会議の結論はこうでした。
「とりあえずその社長さんのガス抜きをしたら適当に値引いて、後は酒でも飲まして機嫌を取ろう」と。
さあ、いよいよ決戦です。
お客様の会社へ向かう途中、車の中では今回の作戦名の話で盛り上がりました。
作戦名は・・・
「酒池肉林作戦」
とりあえず酒とコンパニオンの女性でご機嫌を取ろうと言う単純明快、いかにも浅はかな作戦でした。
お客様の会社に到着し、皆でワザと厳しい表情を作りました。
「申し訳なさ一杯の表情」ってやつです。
すると総務部長が私に「俺、悲壮感漂ってる?」と。
社長室に通され、いつも通り社長さんはソファーにふんぞり返ってタバコを「プカー」と吸っていました。
総務部長とサービス部長と営業所長が揃って、
「この度は大変不愉快な思いをさせて申し訳ございませんでした!」
と切り出しました。
すると社長さんが言いました。
「なんで社長来てへんのや?」と。
すると総務部長が「たまたま社長のお母さまが具合が悪くなってしまい、急遽私とサービス部長の○○で来ることになってしまいまして」と。
その辺は社長さんも何とか理解してくれました。
話の核心は値引き率です。
社長さんの自社オンリーユーザーたるプライドを誇示させたまま、いかにこちらが損せず値引くかです。
ただし、今回は私の上司が3人もいるので、正直言うと楽観視してました。
旭山動物園のレッサーパンダが遊んでいるのを「ボケー」と見るがごとく。
ウルトラマンレオが3分経ってピンチな時に兄のセブンとゾフィーとタロウが駆けつけてくれたばりに。
なんやかんや1時間ほど経ってようやく結論が出そうになりました。
サービス部長が言いました。
「社長、わかりました。25%で勘弁して下さい」と。
社長さんは言いました。
「50%やと言うとるやないかい!」
すると総務部長が言いました。
「30%でいかがでしょうか?」と。
社長さんはニヤリとしましたが、すぐにこう言いました。
「じゃあ間取って35%で許しちゃろうかな」と。
すると営業所長が言いました。
「社長、酒でも飲みながら話しませんか。綺麗処も揃ってる店で」と。
酒池肉林作戦の始まりです。が、しかし。
社長さんは烈火のごとく怒り始めました。
「まだ話が付いて無いのに何言うとるんじゃ!なめんてんの?お前らワシをなめんてんの?!」と。
すると続けざまに社長さんは言いました。
「金輪際お宅の会社とは取引せーへん!出入り禁止じゃ!なめんのも対外にせーや!酒と女で釣ろうなんざ愚の骨頂じゃ!」と。
産まれて初めての出入り禁止でした。
酒池肉林作戦失敗です。
Vol.3へとつづく。